edit

プロポーズ大作戦 最終回 レビュー

『涙の告白は奇跡を呼びますか』
タクシーを下りた2人。

どういうつもり?
健は何も言わず歩き出す。
ねぇ。聞いてんの?
礼は先を歩く健について行く。

小金井市立花岡小学校

タクシーで来た場所は健と礼が初めて出会った小学校だった。

校舎に入る2人。
健は1人廊下を歩いていく。
礼は学校を懐かしみ、健の後をついて行く。

懐かしい。
1つの教室に入った2人。
礼は教室を見回しながら教室の後ろにある本を1冊とった。
健は入り口で立ったまま。

エジソンの本。

ねぇ、まだこの本置いてあるよ。
健は礼の近くへ行く。
それ、俺も読んでた。

健は別の1冊を手に取る。
二十面相の呪い。

これもあったよな。
あぁ、あった。
私は怖くて読めなかったけど。

卒業して10年以上も経ってるのにまだ残ってるんだね。

あぁ!
壁に貼られた習字を気付く礼。
健と同じ名前の子いるよ。
礼が突然近付いてきたので驚く健。
誰かさんと同じであんまりうまくないね。
しかも、愛だし。
笑いながら健を見るが健は少し浮かない表情。
礼の表情も少し硬くなる。

健は出口の方へ少しずつ歩いていく。

何でここに来たの?
わかんない。
えっ?
よくわかんないけど、気付いたらここ来たいって思ってて。
思わず噴出す礼。
もう、バッカじゃないの。
健は振り向く。
もうビックリしたよぉ。
聞いても何にも答えてくれないしぃ。
もぉ~。

健は掃除道具入れをあける。

いったぁ~。
ダッサ~。
礼は笑う。
よくそういうイタズラしてたくせにぃ。

ほうきが出てきて健の頭に当たった。

ねぇ、ここの席覚えてる?
あはは。
こんなちっちゃいんだね。
これが丁度よかったころがあったんだもんねぇ。

 転校してきた吉田礼です。
 よろしくお願いします。

礼の隣に健が座る。

すっごい不思議だよねぇ。
この学校に転校してこなかったら、健と会うこともなかったわけでしょ。
そんなこと言ったら、このクラスじゃなかったら絶対仲良くなってないべ。
ううん。
最初にこの席に座ってなかったら、仲良くなってなかったと思う。
この席で健に消しゴム貸してもらってなかったら、私達、
たぶん、、、幼馴染みっていう関係にはなってなかったんだと思う。

 消しゴムを折り、礼に渡す。
 ありがと、ケンゾー君。

この席じゃなかったら、全然違う今があったかもしれないんだよねぇ。
何か不思議。

懐かしみ笑顔になる礼。
健は複雑な表情になり、礼から目を逸らした。

授賞式会場。

あっ、お前何やってんだよ。おい。
幹雄が何か食べているのに気付いた鶴。
残飯処理も立派な仕事だろ。
屁理屈言ってんじゃねぇよ。お前。
あっ、痛っ。
鶴の口に食べ物を押し込む幹雄。
立派な仕事だぁ。
幸せそうな顔になる鶴。
鶴、シャンパン取ってきて。
ワインがあるよ。ワイン。
シャンパンじゃなきゃキャビア本来の味が引き立たないんだよ。
田崎真也か、お前!
あ~ん。うふふふ。
もう一口食べる2人。

幹雄君。
突然多田さんに呼ばれて、慌てて口をふさぐ。
はい!
振り向き返事する。
あとで、集合写真の撮影お願いしてもいいですか?
いいですよ。
そのためにカメラ持って来たようなもんなんで。
助かります。
それから、礼見かけませんでした?
ごほっ!
むせて胸を叩く幹雄。
う~ん?そういえば見てないですね。
化粧でも直してるんじゃないですかね?
さっきまでその辺にいたんで。
そうですか。
じゃあ、もし見かけたら探していたと伝えてもらえますか?
了解。
はい。

あのさぁ、健もいなくねぇ?
あいつの人生で一番の勝負しに行ってる。
マジ?競馬?パチンコ?
まぁ、ある意味かなりのギャンブルだな。
本気で一発逆転狙ってるし。
あぁ、あいつそんな負けたのかよぉ。
昔からギャンブルのセンスないからなぁ。
チャンスには滅法弱かったな。
それで、勝ちてねぇのか、勝ちたくねぇんだか、わっかんねぇしなぁ。
今回が初めてじゃねぇの?
本気で勝ちにいこうとしてるのって。
勝てると思う?
どうなんだろうなぁ。

小学校。

昔はさぁ、こういうのが楽しかったんだもんね。
ブランコに乗る礼。
1時間でも2時間でも平気で遊んでられたもんな。
健は鉄棒だけは得意だったよね。
鉄棒だけって何だよ。俺苦手なもんねぇし。
野球は?ふざけた感じで聞く礼。
バカ、ふざけんなよ。
だって、ずぅっと補欠だったじゃん。
監督に見る目がなかったんだよ。
そうかなぁ?
あっ!泳げないじゃん。
泳げるし。
あれは、泳げるって言わないから。
ちゃんと25m泳いでたじゃん。ムスッとした声で答える健。
だからぁ、あれは溺れそうになって暴れてたら25m進んだだぁけ。
ほぉーんと、
礼はブランコを飛び降り健を見る。
負けず嫌いなんだから。

ドレス汚れんぞ。
い~の!
ドレス着て、この鉄棒やる人あたしが初めてだと思わない?
日本中探してもお前1人だよ。

すっごい懐かしい感覚。
健もやってみなよ。笑顔で言う礼。
俺はいいって。
逆上がりやってよ。
いいって。
あぁ!もう出来ないんだ。
健は意地になって逆上がりする。
おぉ~。
俺、天才。
笑顔の健。

今だったらグライダー出来るかな?
高い鉄棒に移る礼。
やめとけって。
冗談だよぉ。笑って答える礼。
あの日もそう言って止めてくれたよね。

 あたしだって出来るもん。
 そう言って礼はグライダーをして失敗してしまった。

なのに、あたしが無理して。
怒られたのは健だったね。
ほんといい迷惑だったよ。
だって。
無理って言われれば言われるほどやりたくなるんだもん。
特に健に言われるとそうだった。

あぁ、ねぇ、グライダーとかちょっとやってみてよ。
出来ねぇよ。てか、危ねぇよ。お前。
寂しそうな顔をする礼。
じゃあ、そろそろ行こっか。

歩き出す礼。

礼。
ん?
振り向く礼。
1つ聞いてもいい?
うん。いいよ。
人生でやり直してぇこととかねぇの?
えっ?
後悔してることとかねぇの?

授賞式会場。
多田さんは来ていただいてる方に笑顔を見せるも礼がいないことが心配。
そろそろやっべぇな。
そんな多田さんを見て幹雄は焦る。
ん?
こっちの話。

あたしね。。。高校の頃とか、何であたしたち幼馴染みなんだろうってずっと思ってたんだ。
幼馴染みじゃなかったら、もっと素直になれてたかもしれないとか。
こんなに苦しい思いしなくてすんだのにとか。
色々思った。
でも、、、そこを否定するのは違うって気付いたの。
その時は、辛かったり、失敗だなぁって思ったとしても、
それがなかったら今の私がここで笑ってないって思ったら、
後悔することなんて1つもないって思ったの。
私、、、健に出会えて本当によかったって思ってる。
思わず笑い出す礼。
今、珍しく素直だって思ったでしょ。
健に近付く礼。
これから先、色んなことがあると思うけど、
健の存在だけは変わらないと思う。
今までずっと、健の前では素直になれなかったけど、
健がいてくれたから、今の自分がいるんだって、、思ってる。
ありがとね。
本当に、ありがとう。
礼は深く頭を下げた。

 礼は、過去に逆らうことなく今を生きていた。
 過去の全てを受け入れて、揺るぎない今を生きていた。

 
礼は顔を上げる。

 過去をやり直そうともがいてきた俺にとって、
 礼の潔さは眩しく、そして胸に沁みた。


健は鉄棒につかまる。

 どうして子供の頃、あんなに簡単に出来たことが、
 大人になると複雑で、難しくなってしまうんだろう。


 僕が責任をとります。礼を一生面倒みますから。

健は逆上がりをしてグライダーの準備をする。
不安そうな礼。
健はグライダーを成功させる。
礼は笑う。

 たかがグライダーだったけど、まだ飛べる。
 そう思えた。


ショーグン。

よし。たもっちゃん、もう行くね。
おう、気をつけてな。
うん。
立ち上がるエリ。

ドント・ノック・ニューヨークの看板についている指輪に気付く。
指輪を取り、指輪の何かに気付き驚くエリ。

夜の道を歩く健とエリ。

 失敗することよりも、やらなかった後悔の方が何倍も辛いことを、
 後から知った。


健は立ち止まり礼の背中を見つめる。

 今進もうとしている先に、奇跡の扉があるかわからないけれど、
 自分自身を信じてみようと思った。


授賞式会場。
エリがやってきた。
あたりを見回すエリ。

鶴ぅ。
おう、エリじゃん。
ねぇ、礼は?
何その、来てそうそう。ねぇ、礼は?じゃないでしょ。
ねっ。他に言うことあるじゃん。
礼は!
いやぁ、、、さっきからいないんだよ。
もう一度見回すエリ。
いるじゃん。
えっ?嘘ぉ。
礼は多田さんと話していた。
あら、いつの間に。
エリは下を見て、どうしようかなぁ…という表情をする。

カメラの準備をする幹雄。

ビックリしたぁ。
後ろから健が歩いてきていた。
戻ってきたんなら言えよ。
どうだった?一発逆転狙ってきたんだろ?
やっぱ、、、日程変更した。
はっ?
どうせやるなら大安吉日?
そっか。

多田君ちょっと。
ごめん。ちょっと行って来る。
うん。

礼。
あぁ、エリ。
間に合ったんだ。
頷くエリ。
ちょっといい?
ん?

健たちのところに鶴がやってきた。

あら?
おぉ、お前。あら?何やってんの?
勝負しにいったんじゃないの?
なぁ、何やってんの?
口を抑える幹雄。
日にちが悪かったみたいよ。大安吉日の方がよかったみたい。
わっかいくせにげんなんか担ぎやがって、お前。
うるせぇ。
お前、うるせぇじゃねぇ。お前がいなかっ。
再び口を抑える幹雄。

おい。ちょっとこっち手伝って。
はい。はい。すみません。
鶴と幹雄は仕事に戻り、健は1人になった。
カメラを見つめる。

エリは礼を外に連れ出した。

どうしたの?
お~い。どうした?

私ね、、、礼は一番の親友だと思ってる。
突然のことで思わず笑ってしまう。
急にどうしたの?
礼が幸せになることを、本当に願ってるの。
どうしようか、すっごい迷ったんだけど。
礼は本当に大事な人だから。
だから、ちゃんと納得のいく答えを出してほしいって思った。
ねぇ、さっきから何の話してるの?
エリは鞄から何かを出し礼の手に握らせた。
ただの偶然だと思って、見過ごしちゃえばいいだけの話なのかもしれないけど。
私の手元にこうして巡ってきたことに、何か意味があるような気がして。
エリは会場の中に戻っていく。
えっ?ねぇ、エリ。
礼は手を広げて渡されたものを見る。

指輪だった。

何かに気付く礼。

カメラをスタンバイする健。

 過去に戻って、礼のために無我夢中で走ってきた。
 でも、今という時間の中で、礼と向き合うことはまだ一度も出来ていなかった。


指輪をじっくり見る礼。

 そう。
 俺にはやるべきことが1つだけ残っている。


健はセルフタイマーのスイッチを入れた。

礼は指輪の何かがわかった。
礼は胸の前で指輪を握り締めた。

その時、シャッターが切られる。
礼は光に気付き、光の方向を見つめた。

健は今という時間に戻る。

タバコをくわえる健。
いつもと違う風景にあたりを見回す健。

何かさ、これからどんどんこういうことが増えるんだなぁって思ったら憂鬱じゃね?
えっ!?
目の前に幹雄がいた。
どうした?

 どうなってんだよ。
 何でここなんだよ。


おい!おいおいおい!
鶴が大急ぎでやってきた。
お前らのん気にタバコなんか吸ってる場合じゃねぇぞ。
たもっちゃんがハンバーガー作り始めた。
マジで?
早くも被害者が続出してる。
幹雄を引っ張る鶴。

 これって、スライドショーが始まる前だよな?
 何で?


おい、健。ほら。
俺、これ吸ってから行くわ。
わかった。ほら、幹雄行くぞ。

 どうなってんだよぉ。

ごほっ!ごほん!
咳き込む音に振り向く健。
妖精がいた。

何度も言ってきたが、お前が過去でやろうとしたことは、たかだか過去の数時間を変える作業だ。
健は妖精のもとへ歩いていく。
身をもってわかったと思うが、自分の気持ちや考え方ですら、そんな短い時間で変えられるもんじゃない。
ましてや、人様の感情だ。
変えることは非常に困難だと言わざるを得ない。
過去ではなく、現在で勝負しようって決めたんだろ?
えぇ。
これが本当に正解かどうかわかんないっすけど。
決めました。
今まで過去に戻って、後悔したことを全力でやり直してきました。
もう後がないのに、最後の一歩が踏み出せなかったことも。
頭でばっか考えて、空回りしていたことも。
最後の最後まで、正面から気持ちをぶつけらんなかったことも。
結局自分なんだなって改めて実感しました。
そう思えたのも、過去に戻してもらったおかげです。
本当に感謝しています。
健は深々と妖精に頭を下げた。

大事なことは、過去を嘆く今ではなく、今を変えようとする未来への意志だ。
教会で最初に見かけたときとは、別人のような顔してるな。
そうですか。
あの時は、この世の果てから帰ってきたようなひどい顔をしていた。
今は、若い頃の俺そっくりだ。
妖精かっ!
健の突っ込みの手を止める妖精。
妖精に対してその突っ込みは不適切だ。
笑う2人。
すみません。

不思議なもんで、出来の悪いやつほど目をかけてやりたくなるもんだ。
歴代見てきた人間の中で、お前の意気地のなさと往生際の悪さは群を抜いていた。
彼女を思う気持ちも、群を抜いていた。
お前の成長を、俺は心から喜んでいる。
そして、お前のこれからを楽しみにしている。

過去からここへ戻したのは、俺からの置き土産だ。
置き土産?
過去に戻って必死にもがき苦しみ、
ようやく辿り着いた答えを披露するに相応しい場所を、俺は用意してやった。
求めよ!さらば与えられん。
尋ねよ!さらば見出さん。
扉を叩け!さらば開かれん。

手を出す妖精。
2人は堅く手を取り合った。
そして、抱き合った。

さぁ!胸を張っていけ!

背中をポンと叩く妖精。

はい。

涙をこらえる2人。

妖精は帽子をかぶり、指を鳴らした。
風が吹く。
健は振り向くがそこには妖精はもういなかった。

受付で携帯でテレビを見る係の人。
ソクラテスのテレビショッピングだった。

そこを会場に向かって歩いていく健。

それではぁ、新婦の小学校時代からの親友であり、
新郎とも講師と生徒の関係でありました岩瀬健様よりメッセージを頂戴したいと思います。
拍手が起こる会場。
しかし、健はまだ来ていなかった。
岩瀬様ぁ?

そこに、健がやってくる。

何やってたの?遅いよぉ。
すっげぇ笑わせてくれるんだろうなぁ。
ビビッてんじゃねぇぞ。

健はみんなが見守る中マイクへと歩き出す。

多田さん、礼さん。
ご結婚おめでとうございます。

礼さんとは、小学校からの同級生で学生時代のほとんどを一緒に過ごしてきました。
昨日、小学校の時の卒業アルバムを開いてみたら、
将来の夢を書く欄に、可愛いお嫁さんになりたい、と書いてありました。
まぁ今現在、可愛いかどうかは、大いに疑問ですが。

すっげぇ、可愛いっつうの!
お前が言うな。お前が。

ともあれ、小さい頃からの夢が叶ったことを友人としてとてもうれしく思います。

しばらくの沈黙が続く。

多田さんには申し訳ないですが、礼が結婚を諦めてくれればいいと思ったことがあります。
礼を連れ去ってしまいたいと思ったこともあります。

おい。酔っ払いすぎだぞ。

14年間、、、楽しい時も、辛い時も、苦しい時も。
ずっと一緒に過ごしてきた礼を、幸せに出来るのは、僕しかいないと本気で思っていました。
気に食わないことがあると、すぐにふてくされる礼を。
掃除や仕事をさぼっていると、すぐに怒り出す礼を。
いじっぱりで、全然素直じゃない礼を。
一番知ってるのは僕です。
強い人間に見えて、実はすごく繊細な礼を。
自分のことは二の次で、誰よりも仲間思いな礼を。
ユニフォームの洗濯が抜群にうまい礼を。
いつもただ、そばにいてくれた礼を。
一番必要としていたのは、僕でした。
でも結局、心の中で思ってるだけで、礼の前では一度も素直になれませんでした。
あんなにそばにいて、いつでも言えると思っていた言葉が、
結局一度も言えませんでした。
たった一言が、一度も言えませんでした。
僕は、、、僕は、、、礼のことが、、好きでした。

礼は涙を流す。

正直言うと、今でも礼のことが好きです。
でも礼は、、、今日多田さんと結婚します。
悔しいけど、、、結婚してしまいます。
礼の存在は、僕の中で、すごく大きかったから。
この言葉に辿り着くまでに、ずいぶん時間がかかってしまいました。
礼。。。

健は礼の方へ向く。

結婚おめでとう。
幸せになれよ。
幸せになんなかったら、、、幸せになんなかったら。
マジで許さないからな。

健は堪えていた涙を流した。

それを聞いていた人たちも涙を流していた。

健は頭を下げる。

鶴が手を叩きだし、式場は拍手でいっぱいになった。
礼と多田さんは健に頭を下げた。

健は幹雄達のもとに。
3人から軽く叩かれる。

健は式場を出ていった。

健の言葉に礼の表情は複雑になっていた。
そんな礼に気付く多田さん。

そして、健は教会へ。

ただいまより、スライドショーをお楽しみいただきます。

式場ではスライドショーが始まった。
健は1人、教会で涙を流していた。

 私のそばには、いつも岩瀬健がいた。

健が過去に行くことになった高校最後の試合の後で撮られた写真が映し出される。

 私の思い出には必ず、健の姿があった。

 約束したからな。
 俺が甲子園連れてってやるって。

そして、健の誕生日のときに撮った写真が映し出される。

 健の優しさは、いつもどこか寄り道をして、
 ちょっとだけ遅れて私に届く。


 コーヒー牛乳と書かれた紙を渡す健。
 何これ?
 明日の俺がさ、覚えてねぇかもしんねぇし。

多田先生の教育実習が終わった時の写真。

 今なら気付けるその不器用な優しさに、あの頃の私は、、
 なかなか素直になれなかった。


 あなたが真心手入れをしてくれた、このユニフォームこそ、私の高校時代の証です。

 うれしいのにうれしいと言えない自分が、いつももどかしかった。

卒業の日の写真が映る。

 いつも近くにいると思って、先延ばしにしちゃダメなんだよ。
 明日やろうは馬鹿野郎なんだよ。

礼は健との思い出を思い出す。

 傷つくのが怖くて、最後まで勇気を持てなかったのは私だった。
 健の優しさを信じきることが出来ず、諦めてしまったのは私だった。
 もうふり返らないと決めて、一方的に目をふさいでしまったのは、私だった。
 健は、いつも本気で投げ続けていた。


スライドショーを見つめる礼。
健は涙を拭き、立ち上がり歩き始めた。

 受け止めきれなかったのは、私のほうだった。

スライドショーが終わった。
涙を流す礼。

礼?
多田さんは気付き礼に声をかける。
ごめん。
涙を拭う礼。
何か、色々思い出しちゃって。

廊下に出た2人。

礼。
えっ?
何?
僕は、誰の手にも変えられない運命って絶対存在すると思ってる。
それがどんなに困難に見えても、結ばれるしかない運命って、あると思ってる。
もし、何か迷ってることがあるだったら、ハッキリさせてこれば?
えっ?
二十歳の誕生日の時と同じ顔してる。
あの時は、前からずっと抱えていた問題の答えを探すか、目の前のコンペの課題を取るか、
どっちにするかで迷ってたでしょ。
今、あの時と同じ顔してる。

もし、礼が迷ってるんだったら、今から賭けをしない?
賭け?
うん。
多田さんは服のボタンを取った。

確率は2分の1。
もし、ボタンがない方を選んだら、綺麗さっぱり諦める。
もし、ボタンがある方を選んだら、今抱えてる問題をハッキリさせてくる。
大丈夫。
僕達が、本当に離れない運命にあるんだったら、心配ない。
選んで。

多田さんは両手を出す。
礼はゆっくりと右手を選んだ。

中にはボタンが入っていた。

行ってきな。
礼はそれでも迷い続けていた。
礼が選んだんだよ。
ほら。
礼。

礼は頷き、走り出した。

多田さんは椅子に座りボタンを見つめる。
左手を開くと、もう1つボタンが入っていた。

大きなため息をつく多田さん。
何やってるんだろう。

健を探す礼。
健は教会を出てタクシーをひろった。

ゆっくり行ってください。
どこでもいいんで、ゆっくり、、行ってください。

走り出したタクシー。
タクシーに気付いた礼。

健。

追いかけて礼は叫ぶ。

ケンゾー!ケンゾー!ケンゾー!
ケンゾー!!!

健にその声は届かなかった。
タクシーは走り去ってしまう。

お客様とは数年前にもどっかでお会いしてる様な気がするんですけどぉ。
人違いですかね?
そういえば、会ってましたね。
あっ、やっぱり?運命って巡り巡って来るんですね。
不思議ですねぇ。

礼は教会にいた。

 私たちの人生は、いつもすれ違ってばかりだった。
 これ以上すれ違うのが怖くて、もう迷ったり、揺れたりしないと、
 あの時決めたはずだった。
 もし、、、もしあの時、自分に素直になっていれば、
 ずっと言えなかった一言を、好きですの一言を、
 言うことが出来たのだろうか。

 
授賞式会場の外。
エリに渡された健の指輪を見る礼。

指輪には、

REI×KENZO

と刻まれていた。

涙を流す礼。
大きく息を吸い、はいた。

J.S.ベースという人がこう言っている。
男は初恋を諦めることを出来ず、
女は最後の恋を諦めることが出来ない。

礼を見て微笑む妖精。

お前は女であるにも関わらず、初恋を諦めきれないでいる。
えっ?あっ、あのぉ。
お前の言いたいことはわかってる。
出来ることならあの頃に戻って、人生をやり直したい。
違うか?
考え、頷く礼。

1つ非常にためになる話をしてやろう。
ある1人の男が、悔やんだ過去をやり直す旅に出た。
男は必死で過去を変えようと努力したが、奇跡の扉が開くことはなかった。
旅の果てに男は気付いた。
いくら過去をやり直しても、結局自分は自分でしかないんだと。
そして思った。
過去を嘆く今よりも、今を変えようとする未来への意志が一番重要なんだと。
今からでも、間に合うと思わないか?
悩む礼。
妖精は大丈夫だ。といった感じに頷いてあげる。
そして、礼は走り出し教会を飛び出た。

奇跡の扉は開かれた。

しかし、タクシーは走り続ける。

ゆっくりと、あまりにもゆっくり動くタクシー。
すみませんねぇ。ほんとにぃ。
タクシーの運転手は後ろを見る。
ガス欠って、どんだけぇ~!
健はタクシーを押していた。

ケンゾー!
声に気付き、振り向く健。
ケンゾー!
健は微笑んだ。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

キャスト

☆岩瀬健…山下智久   ☆吉田礼…長澤まさみ

☆奥エリ…榮倉奈々   ☆榎戸幹雄…平岡祐太
☆鶴見尚…濱田岳

☆妖精…三上博史(特別出演)
☆多田哲也…藤木直人

公式HP

第1回感想 | 第2回感想 | 第3回感想 | 第4回感想 | 第5回感想
第6回感想 | 第7回感想 | 第8回 感想 レビュー | 第9回 感想 レビュー | 第10回 感想 レビュー
最終回感想


コメント・TBは感想

template by Lazy Diary

copyright © ぐ~たらにっき all rights reserved.