ぐ~たらにっき
Lazy Diary
『ラスト・ハレルヤチャンス』
幸せはどこに転がっているかわからない。
思いがけない幸運は、思っている以上に身の回りで起こっているのかもしれない。
予期せぬ幸運を掴むには1つだけ条件がある。
どんなに不運を嘆いても、全く気分がのらなくてもかまわない。
とにかく、その場に参加すること。
これこそが幸せの扉を開ける第1歩である。
男の名前は岩瀬健。
最後のタイムスリップを終えたと思いきや、
友達の計らいでもう一度過去に戻るチャンスを得た幸運な男である。
はたして、この男に奇跡の扉は開かれるのだろうか。
正真正銘、これが本当のラスト・ハレルヤチャンス!
でもまぁ、お前の友達は親切なんだか、不親切なんだかわからないな。
よりによって、こんな日の写真を用意するなんてな。
多田さんの晴れ舞台の時の写真ですからね。
こんな写真ならあってもなくても変わんないかなぁ。みたいな。
ていうか、もう結婚式の直前の写真ですし。
正直、この日のことはよく覚えていない。
多田さんの受賞パーティなのに、
悪酔いして礼と多田さんに絡んだことだけは何となく覚えている。
受賞パーティを思い出す健。
多田さん。多田さん。
多田さんは本当に礼のこと幸せに出来るんですか?
えぇ。精一杯頑張ろうと思ってます。
へぇ。
礼。お前は本当にこの人でいいんだな?
飲みすぎなんじゃない?
もうすぐ礼と多田さんが結婚してしまうという事実に押しつぶされ、
酔っていなきゃ口に出来ないことを、2人にぶつけることしか出来なかった。
もし、ここから逆転劇を演じれたとしたら、それは驚きというより、もはや奇跡だ。
起死回生の逆転ホームランは誰にだって打てるわけじゃない。
当たり前の話だがホームランを打てるだけの実力がなければいけない。
それともう1つ、重要なことがある。
それは、逆転の場面で打席に立っているかどうかだ。
幸運なことに試合が延長になって、もう一度お前に打席が回ってきた。
でも、、、この前の写真で僕は完全燃焼しました。
もうやり残したことはありません。
ないなら探せ!
探す?
奇跡の扉を探し続けるんだよ。
どうしても、運命を変えたい。
そう願い続けることでしか奇跡の扉は開かないように出来てる。
奇跡の扉を開ける鍵はお前の心の中にしかないんだよ。
お前はそれに気付いてないだけだ。
岩瀬健!
はい。。。
お前なら出来る。
ショーグンのハンバーガーを手に取る妖精。
もしかして、それ食べるすか?
俺とお前の別れの味だ。
思い出が詰まったこの店の料理で締めくくるのも、、、悪くないだろ?
一口ほおばる妖精。
まずい。。。
当たり前~!
妖精が健に耳打ちする。
俺、そういうテンションじゃないですよ。
求めよ!さらば与えられん。
ラスト・ハレルヤァチャンス!
過去に戻った健。
ウエディングドレスを着た礼が健の横に歩いてくる。
えっ?
花嫁姿の礼が、俺の隣に?
あたし決めた。
えっ?
もう迷わない。
マジでぇ?
もうこれ以上、よそ見したりしない。
き、奇跡だぁ。
奇跡の扉が、つ、ついに。
エリぃ。
えぇ~!?
あたし、やっぱりこの前のドレスにする。
えっ?変えんの?
ドレスの試着かよ。
てか、何でエリまで着てんだよ。
う~ん。それいいと思うんだけどなぁ。
ちょっとシンプルすぎるしぃ。
そんなことないよ。多田先生も気に入ると思うし。
そうかなぁ。
礼のドレス姿を撮るエリ。
健ちょっとそのスーツ微妙じゃない?
健は姿見で自分の姿を見る。
これはこれで、、、まぁ似合ってるんじゃない?
そう?松戸系のホスト系じゃね?
お前うるせぇ系だろ。
松戸知ってんのかよ。お前。
(礼とエリが2人で何か言ったのですが、
僕が知らないのでわけがわからず聞き取れませんでした)
2人同時でしゃべるな系。
楽しそうな健。
おまたせ。
どう見ても東南アジアのスターだろ。
シンガポールのアイドル系。
そんな悪くないだろ。
決してよくもないと思うけど。
どうぞ。
鶴の登場に全員笑う。
恥ずかしい。
やっぱそれが一番似合うんじゃないの。
えっ?そうか。
そのまま映画館に行って、子供1枚って言っても絶対ばれないよ。
あっ。ほんと?
あっ!名探偵コナン?
真実はいつも1つ!
笑う4人。
コラァ!
俺、こんなことしてる場合かよ。
ていうか、奇跡の扉ってどこにあんだよ!
結婚するって色々大変なんだねぇ。
式
なんか一日しかねぇのにな。
つきあってもらっちゃってゴメンね。
いいよ。別にヒマだし。
でも、5人で会うのかなり久々だよねぇ。
そうか?
今年は正月ですら全員揃わなかったしねぇ。
お前のせいだろうが。
地方ロケだったんだからしょうがねぇだろうがよ。
だから、たまにはいいんじゃない?こういうのもさ。
う~ん。
まぁな、結婚したらそうはいかないからな。
健は4人の会話を黙って聞いていた。
冷蔵庫に掃除機。
礼の嫁入り道具の買い物をする5人。
嫁入り道具買うのにつきあってる場合じゃねぇだろう。
5.5合炊きってちょっと大きすぎるんじゃないの?
いや、でもぉ。
お弁当の分もあるからぁ。
目の前に多田さんがいるわけではないのに、礼の隣に多田さんが立ってるようだった。
やっぱりコレは必要でしょ きっとおいしーい ご飯が炊けちゃうよ
お楽しみに
礼からのメールを見る多田さん。
伊藤先生を訪ねていた。
ろくろを回す先生。
あのぉ、先生に披露宴のスピーチをお願いできないかと思いまして。
ふふふふふっ。
しかし、お前が結婚とはなぁ。
教育実習で高校に来た時は、オドオドして頼りなく見えたけどなぁ。
あの時は、自分でも恥ずかしくなるくらいダメでしたね。
実際、礼にもきついこと言われましたし。
丁度いいんじゃないか。
はい?
お前と吉田、いいバランスなんじゃないか?
陶芸も一緒だ。
土と水のバランスがよくないと、いい器にはならん。
ふん!ふ~ん!
完成だ。
手には6面完成したルービックキューブが。
先生はいつから陶芸始めるんですか?
まだまだ先の話だろうなぁ。
人だかりが出来てるのに気付く5人。
ねぇねぇ。何あれ?
私を国王の座から引きずりおろす気か!
ソクラテス!
そんなにやってみたいのなら、やってみるがいいさ。
いつの間にあんな仕事してんの。
あなたのか弱い腕でも簡単におろせてしまうだろうから。
やっべぇな。
6つのたこ焼きを5人でわける。
1つ余ったたこ焼きを誰が食べるか決めるためにグーにした腕を出す5人。
いくぞ!
いっせーので2。3本あがって礼失敗。
いっせーので3。2本あがってエリ失敗。
よ~し、いくぞ。
5人を見る子供に気付く鶴。
みんなが見る。
その隙に鶴が言う。
いっせーので5。鶴のみで失敗。
だっせー。4人が声をそろえて言う。
いっせーので1。
イエス!
あっま~い。
余計なことすんなよ。
礼があげていて健失敗。
いっせので0。
えぇぇ~!4人が叫ぶ。
ちょ~悔しいんだけど。
食うなよ。食うなよ。おい。
平然と食べる幹雄。
ゲームセンターへ行く5人。
エアーホッケーをすることになった。
幹雄はカメラ係に。
幹雄は寂しそうな顔。
健と礼、鶴とエリに分かれて対決。
負けたらジュースね。
ちゃんとおごってよぉ。
負ける気がしねぇ。
勝ち目があるとでも思ってんのか。
足ひっぱんないでよ。
こっちの台詞だよ。
先制点を取られた健と礼。
そんなに弱いと思わなかったわ~。
エリ1人でも勝てちゃうんじゃないの?
ねぇ~。鶴とエリは見つめ合い言う。
何やってんのよ。
お前だろ。
ちゃんと守ってよ。
もう仲間割れかぁ?おい。
早いじゃないのぉ?
点を取り返した2人。
大学を卒業してから、5人が揃うことは難しくなっていたけど、
どんなに久しぶりに会っても、一瞬にして学生時代に戻れた。
でも、、、こうした時間が、、、永遠には続かないとわかっていたから、
笑う時も、喜ぶ時も、悔しがる時も、、、心なしか大げさになった。
7対7の同点。
健わかってる。
まかせろ。
健は最後の点を入れた。
エアーホッケーのビデオを見直す健。
2人が喜ぶ姿に頭が入ってくる。
鶴コラ!お前。頭でかっ!
何だよ。お前いきなり。
かぶってんだよ。
知らねぇよ。んなもん。うるせぇ。
社会人になってから変わってしまったことが1つだけあった。
俺と結婚しろよ。
何にもわかってない。
礼はあの日以来一度もケンゾーと呼ばなくなった。
健。どっちがいい?
優勝商品。
缶を2つ持つ礼。
ほら、はい。
答えない健に礼は片方を渡した。
サンキュ。
礼の口から健という言葉を聞くたびに、
2人の距離がどんどん離れていく気がしてたまらなかった。
俺はこの期に及んで一体礼に何をすればいいんだろう。
甘いもん食べたいなぁ。エリは鶴に甘える。
わかった。任せろ。
幹雄はタバコを買いに行く。
ピンポンパンポ~ン!
健と礼、エリが3人で歩いていると館内アナウンスが鳴り響く。
東京都東八王子市からお越しの奥エリ様。奥エリ様。
私?
お連れの鶴見尚君が迷子になっております。
笑う礼とエリ。
鶴ぅ?
エリ~。愛してるよ~。俺はマジだよ~。
館内アナウンスの途中で鶴がエリに告白した。
えぇ。困るエリ。
おい。呼ばれんぞ。
迎えにいってあげないとまたひがんじゃうかもよ。
全然成長しないんだもん。
すみませ~ん。
エリは迷子センターに。
おっ。エリ~。
はい。ソフトクリームを渡す鶴。
俺の愛ちゃんと届いた?
バ~カ。
ん?返す言葉が違うじゃ~ん。
そのさ。遠慮とかそういうのはいいからさ。
溢れる思いを俺にどんとぶつけてこいよ。
なっ。さぁこい。
チビ。
きっついなぁ。ちっちゃくたって生きてんだぞ。
このソフトクリームだって牛乳で出来てんだから。
立ち止まるエリにぶつかる鶴。
ん!
ソフトクリームを鶴に返すエリ。
鶴に近付きキスをした。
通路の真ん中で。
周りの人がジロジロ見ている。
早くいこ。
鶴はビックリして目がキョロキョロ。
2人は笑顔で歩き出す。
健は空き缶をゴミ箱に投げる。
外れてしまう。
ぶっ。噴出す礼。
だっさぁ。
もう一度投げる健。
しかし外れる。
礼は笑う。
次が本番!
よし!ほらな。
空き缶はゴミ箱へ。
なっ。じゃないでしょ。
笑い出す礼。
ほんと昔っから、そういうとこあるよねぇ。
えっ?
何やっても下手なくせに、出来るまで意地になってやるでしょ。
思い出し笑いをする礼。
小学校の頃ね。
健が放課後とかに、ペン回しとか二重飛びとか一輪車とか。
影でこっそり練習してるの見て、よく笑ってたんだよね。
お前性格わりぃな。
そのくせ、すぐ得意になって教えてやろっか。とか言ってくるのがすっごいしゃくでさ。
お前だってそうだろ。何でも張り合ってさ。
たまぁに俺が出来ないと、えぇ~出来ないの~。っつって騒いでたし。
まぁ、そういうときもあったね。
笑う礼。
負けたくなくて必死にやってたけど、結局諦めちゃったこといっぱいあるんだよねぇ。
私は、いっつもどっかで自分には無理だなぁとか思うと諦めちゃうとこあったけど、
健は、、、絶対自分から諦めたりしなかったよね。
どんなに時間がかかっても、ずぅ~っと校庭に残ってやってたよね。
二重飛びのときも一輪車のときも。
ずぅ~っと。
ほんと往生際が悪いっていうかさぁ。
でも、、、そういうところが好きだったんだよね。
礼。
ん?
あのさ。
気持ちを決めて何かを言おうとした健。
しかし、幹雄達が来てしまう。
何かさ。フリーターカップル暇にまかせてイチャイチャしてんだよね。
そういう言い方やめてよ。
ねっ。コーヒー飲みたいなぁ。
は~い。
あっ。俺もコーヒー。
はいはい。
社会人だからって幹雄みたいに全然寝てないとか、休んでないしか言わないのもどうかと思うけどね。
事実なんだからしょうがないだろ。
健は仕事どうなの?
どうって。まぁ別に普通だよ。
通勤電車で偶然出会ったスッチーと恋に落ちちゃったりしないの?
月9じゃねぇんだから、お前。そんなことそうそう起きねぇよ。
つまんないの。
コーヒーを買った鶴が椅子に座る。
鶴は今何のバイトしてんの?
牛乳配達。
えっ!?ほんとにぃ。
余った牛乳も飲み放題だからさ。
一石二鳥だろ。
もう伸びねぇよ。
はいはい!
エリはショーグンだけ?
この前ファミレスの面接行ってきた。
週2くらいで昼間も働こうかなぁ。とかって思ってさ。
へぇ。そうなんだ。
えっ?言ってなかったっけ?
うん。知らなかった。
俺も初耳だわ。
何かさ、お互いに知らないこと多くなってきたよね。
うん。高校の頃は健のテストの点数とか礼がはまってるコンビニのお菓子とか。
くっだらねぇことよく知ってたのになぁ。
見てるテレビも、聞いてる音楽もなんとなく知ってたしね。
そうだね。
昔だったら考えられないな。
高校、大学ってず~っと毎日顔合わせてたもんねぇ。
これから、もっとお互いのこと知らなくなっちゃうのかなぁ。
仕事が忙しくなったり、結婚して子供が出来たりしてさ。
こういう時間もどんどんなくなっていっちゃうのかなぁ。。。
5人は歩き始めた。
そろそろショーグンいこっか。
えぇ~。エリ行っちゃうの?
また、今日の夜多田先生の受賞パーティで会えるでしょ。
そうだ。よろしくねっ。
冷静に考えたらすっげぇめんどくせぇな。
健も幹雄も逃げないように連れて行くから。
お願いね。
じゃ、俺らも行くか。
どっか行くの?
それだけは絶対いえない。
どうして?
どうしても。
どうせくだらないことでしょ。
いこ。じゃあね。
奇跡の扉を開ける鍵は、心のどこに隠れているんだろう。
それを見つけることが出来れば、この距離をうめられるんだろうか。
健、幹雄、鶴は礼の実家に到着。
よっしゃ、行くぞ。
幹雄が返事をし、鶴と幹雄は車を降りる。
おい、健。早くしろ。お前。
早くしないと礼帰ってきちゃうぞ。
気がのらねぇのは、わかるけどさぁ。
行こうぜ。
健は渋々車を降りた。
ショーグンに来た礼とエリ。
いらっしゃいませ。
お~。やっほ。
ただいま。
おかえり。
人のいない店内。
ここは相変わらず暇だねぇ。礼は笑いながら言う。
あたしも客だったらあんま来たくないしなぁ。
そんな言い方ねぇだろ。
保はエリにエプロンを渡す。
ねぇ、たもっちゃん、礼の結婚式来んの?
来るも来ないも、会場でハンバーガー作ってくださぁい。って礼に言われちゃってるからさぁ。
そうなの?
うん。
礼はさ、いい男捕まえたよなぁ。
ありがとう。
礼と多田先生、ほんと仲良いよね。
ケンカとかしたことないでしょ?
う~ん?まだないかも。
いいなぁ。優しいし包容力あるし。
やっぱ男は年上だよな。
女は男で変わるんだなぁ。
えっ?
だってさ、ここに来てる時は健なんかとよくケンカしてただろ。
エリは思い出し笑いをする。
おぉ~。噂の男登場。
いらっしゃぁい。
多田さんがショーグンにやってきた。
こんにちわ。
先生さ。ちょっとわりぃんだけど、俺今から出かけなくちゃいけねぇんだよ。
だから、食いもんだせねぇわ。
あぁ、むしろその方が助かります。
あまりのショックで上着を落とす保。
礼とエリは笑う。
まぁ~、ケンゾー君。ずいぶん久しぶりねぇ。
挨拶する幹雄と鶴。
こんにちわ。
お父さん。ケンゾー君たちきたわよ。
えぇ。。。礼、多田さん。
私は未だに2人の結婚は認めておらん。
これから先も祝福する気持ちになれないことは明々白々なので、今のうちにとっとと別れて、、、
はい。カット、カット。
あのぉ、ちょっとざっくばらんすぎると言うか。
何だ、本音で言っちゃいかんのか。
お父さん!
えぇ、あの、これは結婚式の2次会で流すサプライズビデオなんで、
ざっくばらんな感じといえばまぁそうなんですけど。
わかった、わかった。
もう一度撮りなおし。
礼、多田さん。
ご結婚おめでとう。
いやぁ、しかしまぁ、正直なところ私は、、、今でも、こんなに早く結婚する必要はないと思ってる。
もぉ~お父さん!
いいから。
私が結婚する時も、妻の父親に猛烈に反対をされた。
ずいぶん理不尽な人だったと思ってる。
しかし、礼が生まれた時、初めてそのお父さんの気持ちがわかった。
この子がやがて誰かのもとへ、嫁いで行く日が来るのかと思うと、胸が潰れそうになって困った。
娘はずっと昔から手のかからない子でしてねぇ。
手がかからない分、かえって心配でねぇ。
どこかで、無理をしてるんではないか。
どこか誰にもわからないところに、自分だけの悲しみを溜め込んでいるんではないか。
そんなとき、礼が、こんなことを言ったんです。
多田さんは私の弱さを全て知った上で、受け止めてくれる素晴しい人だと。
もしかしたら、多田さん、私はあなたに嫉妬していたのかもしれません。
23年間ずっと一緒に暮らしてきたのに、私たちには終ぞ見せなかったものを、
あなたには素直に見せていたんですからね。
あの子がねぇ。。。
感動する幹雄と鶴。
どうか、、、どうか、娘を幸せにしてやってください。
隣でお母さんが涙を流す。
よろしくお願いします。
涙をこらえながらお父さんは最後の言葉を言った。
結婚は2人だけのものではない。
お父さん最高だ。あんた最高だ。
鶴はお父さんに抱きついた。
幹雄は鶴を殴る。
お前何やってんだ。
両親や兄弟を含めた、家族みんなの上に成り立っている。
過去の自分はその重みに耐えかねて、酒に逃げる以外の方法が見つからなかった。
礼への思いは、結婚と言う現実に、いとも簡単に押しつぶされた。
結婚式場を下見する礼と多田さん。
本当に来ちゃったね。ここまで。
うん。知り合ってからあっという間だったね。
いろんなことが、ついこの前みたい。
あれ?もしかしてマリッジブルー?
ううん。
本当に僕でいいと思ってる?
もう。何言ってんの。
あの日に言ってくれたでしょ。
二十歳の誕生日を迎える日。
やってみなければ、そこに答えがあるのかどうかもわからない。
もし、そこに答えがなかったとしても、また別の問題を見つければいいって。
あの言葉があったから、今こうして2人で立ってるんだなぁ。ってしみじみ思う。
微笑む多田さん。
あんなに泣いたこととか、辛かったこと。
今、こうして思い出として話せるようになるんだから。
時間がすぎるのってあっという間。
うん。そうだね。
笑顔の多田さん。
いこっか。
うん。
式場を出ようとする多田さん。
ねぇ、まだ、、、私に一度も聞いたことなかったよね。
ん?
あの日なんで泣いてたか。
二十歳の誕生日を思い出す。
涙を流す礼にハンカチを渡す多田さん。
ごめんなさい。
もしかして、泣かせてしまうほど退屈でした?
聞かないの?
うん。いいんだ。
僕の知らない礼がいてくれたからこそ、今の礼がいるんだし。
そういうこと、全部ひっくるめて礼のことが好きだから。
それに、あの時は偉そうに話してたかもしれないけど、
僕も過去に似たような経験をしたから言えたんだよね。
え?
過去があったからこそ、こうして出会って、今ここにこうしていられると思うから。
うん。
礼も僕の過去全て知ってるわけじゃないでしょ。
うん。
中学の時、好きな女の子に何考えてるかわからない。ってふられたり。
礼は笑う。
失恋のショックで意味もなく丸坊主にしたり。
そんなことあったの?
うん。
これからのことのほうが、ずっと大切だと思うんだ。
これまでの別々の過去より、これから2人で過ごす時間を、
僕はずっとずっと大切にしていきたいと思ってる。
礼は微笑む。
保が大きな荷物を抱えてショーグンに帰ってくる。
どうしたの?
えっ?インテリアを一新しようと思ってさ。
はっ?
お前、味はいいのに客が来ないっちゅうのはおかしいだろ。
インテリアのせいじゃないと思うんだけど。
変な置物ばかり出てくる。
こんなの置いたらますますお客さん来なくなるよ。
そんなことないって。
アフロの置物が出てくる。
何これ。
押してみ。
ボンバヘーッド!
ボンバヘー!ってどんだけぇ!
すると、アフロのお客さんが来る。
もう一度押す。
すると、またアフロのお客さんが来る。
次は2回連続で押す。
すると、アフロ2人が一緒にやってくる。
保が押してみる。
ボンバイエー!
ボンバーイエ?
エリと保は顔を合わして言う。
アントニオ小猪木登場。
再び礼の実家へ場所が移る。
おい、健先行くぞ。
お父さん、みなさんお帰りよ。
健はおじいちゃんの写真に気付き手を合わせる。
ずいぶん、気にいられてたみたいね。
よく話してたのよぉ。
またケンゾー君の家に遊びに行くって。
最後まで礼の婿はあいつで決まりだなって言ってたわよ。
今度やろうは馬鹿野郎。明日やろうも馬鹿野郎。思い立ったらすぐ何でもやらなきゃダメだ。
後悔するなよ。いつも明日が来ると思ったら、痛い目みるぞ。
礼のこと頼んだぞ。
えっ?
うちの家系にはろくでもない男がちょうどいい。
健はおじいちゃんの言葉を思い出した。
礼もすっごい感謝してたっけねぇ。
ケンゾー君のおかげで、じいじに言いたいこと言えたって。
車の前。電話する幹雄。
うん。温泉のパンフレット送っといたから見といて。
あぁ、それ。また折り返す。じゃあね。
誰?優子?
ううん。優子のお母さん。
えぇ~!
だって、お前まだ優子と結婚してないじゃん!
だからぁ、温泉とか連れてって機嫌とんないといけないの。
どうやったら、相手のお母さんと仲良くなれるんですか?
知りたい?
知りたい。
タバコをくわえる幹雄。
あっ。なるほどね。
ライターを出しタバコに火をつける鶴。
健はアルバムを見ていた。
昔はよぉくうちに遊びに来てたわね。
はい。小学生くらいのときはしょっちゅうお邪魔してましたね。
ほんと。
小学生の時に引っ越してきてから大学まで、あなたの名前聞かない日はなかったわ。
あなたが遊びに来なくなってからも、礼から話を聞いてたのよ。
何かって言えば、ケンゾーがね。ケンゾーがね。って。
思い出し笑うお母さん。
ずいぶんとケンカもしてたみたいだけど、礼にとってずっと特別な存在なんだなぁ。
っていうのは母親の私でもわかるくらいだったから。
じゃなきゃ、あの子がケンゾー君と同じ高校行きたい。なんて言わないもの。
健は驚いた。
そうだ。
このときのことケンゾー君覚えてる?
1枚の写真を指さした。
ソファに座る2人。
すいかを食べる笑顔の礼。ひじを怪我している。
隣には健がムスッとした顔で座っている。
健はソファを見る。
えぇ、覚えてます。
俺さ、こんなこと出来るようになったんだぜ。
健は礼に逆上がりから飛行機をして見せた。
私だって出来るもん。
礼は着地に失敗して肘を怪我した。
先生が駆け寄ってきた。
女の子の体に傷つけるようなことして、もし痕残ったらどうするつもり。
健は診察室の前で礼を待っていた。
礼とお母さんが出てくる。
待っててくれたの?
お母さんは驚き健に言う。
健は立ち上がる。
思わず笑っちゃったわよ。
お母さんの方に向き直る健。
小学5年生があんなこと言うんだもの。
写真を見つめる健。
おじいちゃんも言ってたけど、あたしもしかしたらケンゾー君と礼が結婚するじゃないかって思ってたのよ。
女の勘って当たらないものね。
笑いながらお母さんは言う。
帰りの車。
やっぱお父さんの言葉っつうのは反則だよな。
ん?
礼の親父に会ったのって初めてなんだけど、何か感情移入しすぎで泣きそうになっちゃった。
あぁいうの見ると、やっぱ結婚てすげぇよなぁ。
でも、結婚なんてすると物事の優先順位変わっちゃうんだろうな。
家に金入れたり、嫁を大事にしたり、嫁のお母さんを大事にしたりさ。
じゃあ、幹雄が結婚したら俺らって何位くらいになる?3位とか4位?
鶴はランクキング外。
何で俺だけランクキング外なんだよ。
幹雄をこしょばす鶴。
今、礼の中で俺は何番目にいるんだろう。
結婚したら、何番目になってしまうんだろう。
受賞パーティ会場。
何で俺たちウエイターなの?
人手が足りねぇからしょうがねぇんだよ。
雇えばいいのに。
文句を言うな
来場者に礼を紹介する多田さん。
それを見つめる健。
ショーグンにて。
どんだけミルクシェーク飲むんだよ。
エリは怒っていた。
もうどうして今日に限ってこんなに忙しいの!
なぁ。ビックリしたよなぁ。
バーガー生活15年、こんなに客入ったの初めてだからよぉ。
インテリアの効果がこんなにすごいとは思わなかった。
まだ全然飾ってないじゃん。
あっそうだ。忘れてた。
犬の置物を出す保。
ねぇ、それどうするの?
えぇ?さてどこに飾るかなぁ。
エリ。猫。
犬だし!
多田さんの授賞式が始まった。
多田さんを見つめる礼を健は寂しそうに見た。
似合わないねぇ。その格好。
うるせぇなぁ。
私はぁ?どう?似合ってる。
鏡見てこいよ。
ちょっと。ひどくなぁい?
けっこう可愛いのに。
礼。ちょっといい?
じゃっ。
これまでの14年間、礼の横にいるのが当たり前だった。
そんな当たり前のことが、もうすぐ叶わなくなってしまう。
声をあげて笑いあった日々も。
穏やかに流れていく時間も。
あんなに怒らせた日々も。
あんなにケンカした日々も。
もう手の届かないところに消えてしまう。
礼が、世界で一番好きな人が、他の男と結婚してしまう。
健は礼の肘に残る傷を見つめる。
小学5年生のことを思い出す。
待っててくれたの?
僕が責任をとります。礼を一生面倒みますから。
まぁ。驚くお母さん。
よろしくお願いします。
礼は笑顔で答えた。
あんなに小さな頃にいえた言葉が、
年を重ねれば重ねるだけ、口に出せなくなって、
思いが募れば募るほど遠くなった。
あの時交わした約束は、今ここに消えようとしている。
健は絶対自分から諦めたりしなかったよね。
ほんと往生際が悪いっていうかさぁ。
でも、そういうところが好きだったんだよねぇ。
会場を出て行こうとする礼の後姿を見つめる健。
健は追いかけて会場を飛び出した。
礼の手を掴み走り出す。
ちょっと、どうしたの?
ショーグンに場所が移る。
何でそんな顔するかなぁ。
これから、パーティに行くんでこんなくっだらないことにつきあってる暇ないんです!
あぁ!ちょっと待て。エリちょっと待て。
これだけ見て。お願い。
一番大きな包装を破る保。
探すの苦労したんだよ。
我が愛すべきナンバー1ブランド。
ドント・ノック・ニューヨーク。
お疲れ様でしたぁ。
なっ、なっ、もうちょっと何かないのかよぉ。
保が持ってきたのはドント・ノック・ニューヨークの看板だった。
自由の女神の冠の先には健がつけた婚約指輪がはまったままだった。
健は礼を連れてひたすら走っていた。
礼は健をどうしていいのかわからない表情で見ながら連れられるまま走っていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
キャスト
☆岩瀬健…山下智久 ☆吉田礼…長澤まさみ
☆奥エリ…榮倉奈々 ☆榎戸幹雄…平岡祐太
☆鶴見尚…濱田岳
☆妖精…三上博史(特別出演)
☆多田哲也…藤木直人
公式HP
第1回感想 | 第2回感想 | 第3回感想 | 第4回感想 | 第5回感想
第6回感想 | 第7回感想 | 第8回 感想 レビュー | 第9回 感想 レビュー | 第10回感想
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思いがけない幸運は、思っている以上に身の回りで起こっているのかもしれない。
予期せぬ幸運を掴むには1つだけ条件がある。
どんなに不運を嘆いても、全く気分がのらなくてもかまわない。
とにかく、その場に参加すること。
これこそが幸せの扉を開ける第1歩である。
男の名前は岩瀬健。
最後のタイムスリップを終えたと思いきや、
友達の計らいでもう一度過去に戻るチャンスを得た幸運な男である。
はたして、この男に奇跡の扉は開かれるのだろうか。
正真正銘、これが本当のラスト・ハレルヤチャンス!
でもまぁ、お前の友達は親切なんだか、不親切なんだかわからないな。
よりによって、こんな日の写真を用意するなんてな。
多田さんの晴れ舞台の時の写真ですからね。
こんな写真ならあってもなくても変わんないかなぁ。みたいな。
ていうか、もう結婚式の直前の写真ですし。
正直、この日のことはよく覚えていない。
多田さんの受賞パーティなのに、
悪酔いして礼と多田さんに絡んだことだけは何となく覚えている。
受賞パーティを思い出す健。
多田さん。多田さん。
多田さんは本当に礼のこと幸せに出来るんですか?
えぇ。精一杯頑張ろうと思ってます。
へぇ。
礼。お前は本当にこの人でいいんだな?
飲みすぎなんじゃない?
もうすぐ礼と多田さんが結婚してしまうという事実に押しつぶされ、
酔っていなきゃ口に出来ないことを、2人にぶつけることしか出来なかった。
もし、ここから逆転劇を演じれたとしたら、それは驚きというより、もはや奇跡だ。
起死回生の逆転ホームランは誰にだって打てるわけじゃない。
当たり前の話だがホームランを打てるだけの実力がなければいけない。
それともう1つ、重要なことがある。
それは、逆転の場面で打席に立っているかどうかだ。
幸運なことに試合が延長になって、もう一度お前に打席が回ってきた。
でも、、、この前の写真で僕は完全燃焼しました。
もうやり残したことはありません。
ないなら探せ!
探す?
奇跡の扉を探し続けるんだよ。
どうしても、運命を変えたい。
そう願い続けることでしか奇跡の扉は開かないように出来てる。
奇跡の扉を開ける鍵はお前の心の中にしかないんだよ。
お前はそれに気付いてないだけだ。
岩瀬健!
はい。。。
お前なら出来る。
ショーグンのハンバーガーを手に取る妖精。
もしかして、それ食べるすか?
俺とお前の別れの味だ。
思い出が詰まったこの店の料理で締めくくるのも、、、悪くないだろ?
一口ほおばる妖精。
まずい。。。
当たり前~!
妖精が健に耳打ちする。
俺、そういうテンションじゃないですよ。
求めよ!さらば与えられん。
ラスト・ハレルヤァチャンス!
過去に戻った健。
ウエディングドレスを着た礼が健の横に歩いてくる。
えっ?
花嫁姿の礼が、俺の隣に?
あたし決めた。
えっ?
もう迷わない。
マジでぇ?
もうこれ以上、よそ見したりしない。
き、奇跡だぁ。
奇跡の扉が、つ、ついに。
エリぃ。
えぇ~!?
あたし、やっぱりこの前のドレスにする。
えっ?変えんの?
ドレスの試着かよ。
てか、何でエリまで着てんだよ。
う~ん。それいいと思うんだけどなぁ。
ちょっとシンプルすぎるしぃ。
そんなことないよ。多田先生も気に入ると思うし。
そうかなぁ。
礼のドレス姿を撮るエリ。
健ちょっとそのスーツ微妙じゃない?
健は姿見で自分の姿を見る。
これはこれで、、、まぁ似合ってるんじゃない?
そう?松戸系のホスト系じゃね?
お前うるせぇ系だろ。
松戸知ってんのかよ。お前。
(礼とエリが2人で何か言ったのですが、
僕が知らないのでわけがわからず聞き取れませんでした)
2人同時でしゃべるな系。
楽しそうな健。
おまたせ。
どう見ても東南アジアのスターだろ。
シンガポールのアイドル系。
そんな悪くないだろ。
決してよくもないと思うけど。
どうぞ。
鶴の登場に全員笑う。
恥ずかしい。
やっぱそれが一番似合うんじゃないの。
えっ?そうか。
そのまま映画館に行って、子供1枚って言っても絶対ばれないよ。
あっ。ほんと?
あっ!名探偵コナン?
真実はいつも1つ!
笑う4人。
コラァ!
俺、こんなことしてる場合かよ。
ていうか、奇跡の扉ってどこにあんだよ!
結婚するって色々大変なんだねぇ。
式
なんか一日しかねぇのにな。
つきあってもらっちゃってゴメンね。
いいよ。別にヒマだし。
でも、5人で会うのかなり久々だよねぇ。
そうか?
今年は正月ですら全員揃わなかったしねぇ。
お前のせいだろうが。
地方ロケだったんだからしょうがねぇだろうがよ。
だから、たまにはいいんじゃない?こういうのもさ。
う~ん。
まぁな、結婚したらそうはいかないからな。
健は4人の会話を黙って聞いていた。
冷蔵庫に掃除機。
礼の嫁入り道具の買い物をする5人。
嫁入り道具買うのにつきあってる場合じゃねぇだろう。
5.5合炊きってちょっと大きすぎるんじゃないの?
いや、でもぉ。
お弁当の分もあるからぁ。
目の前に多田さんがいるわけではないのに、礼の隣に多田さんが立ってるようだった。
やっぱりコレは必要でしょ きっとおいしーい ご飯が炊けちゃうよ
お楽しみに
礼からのメールを見る多田さん。
伊藤先生を訪ねていた。
ろくろを回す先生。
あのぉ、先生に披露宴のスピーチをお願いできないかと思いまして。
ふふふふふっ。
しかし、お前が結婚とはなぁ。
教育実習で高校に来た時は、オドオドして頼りなく見えたけどなぁ。
あの時は、自分でも恥ずかしくなるくらいダメでしたね。
実際、礼にもきついこと言われましたし。
丁度いいんじゃないか。
はい?
お前と吉田、いいバランスなんじゃないか?
陶芸も一緒だ。
土と水のバランスがよくないと、いい器にはならん。
ふん!ふ~ん!
完成だ。
手には6面完成したルービックキューブが。
先生はいつから陶芸始めるんですか?
まだまだ先の話だろうなぁ。
人だかりが出来てるのに気付く5人。
ねぇねぇ。何あれ?
私を国王の座から引きずりおろす気か!
ソクラテス!
そんなにやってみたいのなら、やってみるがいいさ。
いつの間にあんな仕事してんの。
あなたのか弱い腕でも簡単におろせてしまうだろうから。
やっべぇな。
6つのたこ焼きを5人でわける。
1つ余ったたこ焼きを誰が食べるか決めるためにグーにした腕を出す5人。
いくぞ!
いっせーので2。3本あがって礼失敗。
いっせーので3。2本あがってエリ失敗。
よ~し、いくぞ。
5人を見る子供に気付く鶴。
みんなが見る。
その隙に鶴が言う。
いっせーので5。鶴のみで失敗。
だっせー。4人が声をそろえて言う。
いっせーので1。
イエス!
あっま~い。
余計なことすんなよ。
礼があげていて健失敗。
いっせので0。
えぇぇ~!4人が叫ぶ。
ちょ~悔しいんだけど。
食うなよ。食うなよ。おい。
平然と食べる幹雄。
ゲームセンターへ行く5人。
エアーホッケーをすることになった。
幹雄はカメラ係に。
幹雄は寂しそうな顔。
健と礼、鶴とエリに分かれて対決。
負けたらジュースね。
ちゃんとおごってよぉ。
負ける気がしねぇ。
勝ち目があるとでも思ってんのか。
足ひっぱんないでよ。
こっちの台詞だよ。
先制点を取られた健と礼。
そんなに弱いと思わなかったわ~。
エリ1人でも勝てちゃうんじゃないの?
ねぇ~。鶴とエリは見つめ合い言う。
何やってんのよ。
お前だろ。
ちゃんと守ってよ。
もう仲間割れかぁ?おい。
早いじゃないのぉ?
点を取り返した2人。
大学を卒業してから、5人が揃うことは難しくなっていたけど、
どんなに久しぶりに会っても、一瞬にして学生時代に戻れた。
でも、、、こうした時間が、、、永遠には続かないとわかっていたから、
笑う時も、喜ぶ時も、悔しがる時も、、、心なしか大げさになった。
7対7の同点。
健わかってる。
まかせろ。
健は最後の点を入れた。
エアーホッケーのビデオを見直す健。
2人が喜ぶ姿に頭が入ってくる。
鶴コラ!お前。頭でかっ!
何だよ。お前いきなり。
かぶってんだよ。
知らねぇよ。んなもん。うるせぇ。
社会人になってから変わってしまったことが1つだけあった。
俺と結婚しろよ。
何にもわかってない。
礼はあの日以来一度もケンゾーと呼ばなくなった。
健。どっちがいい?
優勝商品。
缶を2つ持つ礼。
ほら、はい。
答えない健に礼は片方を渡した。
サンキュ。
礼の口から健という言葉を聞くたびに、
2人の距離がどんどん離れていく気がしてたまらなかった。
俺はこの期に及んで一体礼に何をすればいいんだろう。
甘いもん食べたいなぁ。エリは鶴に甘える。
わかった。任せろ。
幹雄はタバコを買いに行く。
ピンポンパンポ~ン!
健と礼、エリが3人で歩いていると館内アナウンスが鳴り響く。
東京都東八王子市からお越しの奥エリ様。奥エリ様。
私?
お連れの鶴見尚君が迷子になっております。
笑う礼とエリ。
鶴ぅ?
エリ~。愛してるよ~。俺はマジだよ~。
館内アナウンスの途中で鶴がエリに告白した。
えぇ。困るエリ。
おい。呼ばれんぞ。
迎えにいってあげないとまたひがんじゃうかもよ。
全然成長しないんだもん。
すみませ~ん。
エリは迷子センターに。
おっ。エリ~。
はい。ソフトクリームを渡す鶴。
俺の愛ちゃんと届いた?
バ~カ。
ん?返す言葉が違うじゃ~ん。
そのさ。遠慮とかそういうのはいいからさ。
溢れる思いを俺にどんとぶつけてこいよ。
なっ。さぁこい。
チビ。
きっついなぁ。ちっちゃくたって生きてんだぞ。
このソフトクリームだって牛乳で出来てんだから。
立ち止まるエリにぶつかる鶴。
ん!
ソフトクリームを鶴に返すエリ。
鶴に近付きキスをした。
通路の真ん中で。
周りの人がジロジロ見ている。
早くいこ。
鶴はビックリして目がキョロキョロ。
2人は笑顔で歩き出す。
健は空き缶をゴミ箱に投げる。
外れてしまう。
ぶっ。噴出す礼。
だっさぁ。
もう一度投げる健。
しかし外れる。
礼は笑う。
次が本番!
よし!ほらな。
空き缶はゴミ箱へ。
なっ。じゃないでしょ。
笑い出す礼。
ほんと昔っから、そういうとこあるよねぇ。
えっ?
何やっても下手なくせに、出来るまで意地になってやるでしょ。
思い出し笑いをする礼。
小学校の頃ね。
健が放課後とかに、ペン回しとか二重飛びとか一輪車とか。
影でこっそり練習してるの見て、よく笑ってたんだよね。
お前性格わりぃな。
そのくせ、すぐ得意になって教えてやろっか。とか言ってくるのがすっごいしゃくでさ。
お前だってそうだろ。何でも張り合ってさ。
たまぁに俺が出来ないと、えぇ~出来ないの~。っつって騒いでたし。
まぁ、そういうときもあったね。
笑う礼。
負けたくなくて必死にやってたけど、結局諦めちゃったこといっぱいあるんだよねぇ。
私は、いっつもどっかで自分には無理だなぁとか思うと諦めちゃうとこあったけど、
健は、、、絶対自分から諦めたりしなかったよね。
どんなに時間がかかっても、ずぅ~っと校庭に残ってやってたよね。
二重飛びのときも一輪車のときも。
ずぅ~っと。
ほんと往生際が悪いっていうかさぁ。
でも、、、そういうところが好きだったんだよね。
礼。
ん?
あのさ。
気持ちを決めて何かを言おうとした健。
しかし、幹雄達が来てしまう。
何かさ。フリーターカップル暇にまかせてイチャイチャしてんだよね。
そういう言い方やめてよ。
ねっ。コーヒー飲みたいなぁ。
は~い。
あっ。俺もコーヒー。
はいはい。
社会人だからって幹雄みたいに全然寝てないとか、休んでないしか言わないのもどうかと思うけどね。
事実なんだからしょうがないだろ。
健は仕事どうなの?
どうって。まぁ別に普通だよ。
通勤電車で偶然出会ったスッチーと恋に落ちちゃったりしないの?
月9じゃねぇんだから、お前。そんなことそうそう起きねぇよ。
つまんないの。
コーヒーを買った鶴が椅子に座る。
鶴は今何のバイトしてんの?
牛乳配達。
えっ!?ほんとにぃ。
余った牛乳も飲み放題だからさ。
一石二鳥だろ。
もう伸びねぇよ。
はいはい!
エリはショーグンだけ?
この前ファミレスの面接行ってきた。
週2くらいで昼間も働こうかなぁ。とかって思ってさ。
へぇ。そうなんだ。
えっ?言ってなかったっけ?
うん。知らなかった。
俺も初耳だわ。
何かさ、お互いに知らないこと多くなってきたよね。
うん。高校の頃は健のテストの点数とか礼がはまってるコンビニのお菓子とか。
くっだらねぇことよく知ってたのになぁ。
見てるテレビも、聞いてる音楽もなんとなく知ってたしね。
そうだね。
昔だったら考えられないな。
高校、大学ってず~っと毎日顔合わせてたもんねぇ。
これから、もっとお互いのこと知らなくなっちゃうのかなぁ。
仕事が忙しくなったり、結婚して子供が出来たりしてさ。
こういう時間もどんどんなくなっていっちゃうのかなぁ。。。
5人は歩き始めた。
そろそろショーグンいこっか。
えぇ~。エリ行っちゃうの?
また、今日の夜多田先生の受賞パーティで会えるでしょ。
そうだ。よろしくねっ。
冷静に考えたらすっげぇめんどくせぇな。
健も幹雄も逃げないように連れて行くから。
お願いね。
じゃ、俺らも行くか。
どっか行くの?
それだけは絶対いえない。
どうして?
どうしても。
どうせくだらないことでしょ。
いこ。じゃあね。
奇跡の扉を開ける鍵は、心のどこに隠れているんだろう。
それを見つけることが出来れば、この距離をうめられるんだろうか。
健、幹雄、鶴は礼の実家に到着。
よっしゃ、行くぞ。
幹雄が返事をし、鶴と幹雄は車を降りる。
おい、健。早くしろ。お前。
早くしないと礼帰ってきちゃうぞ。
気がのらねぇのは、わかるけどさぁ。
行こうぜ。
健は渋々車を降りた。
ショーグンに来た礼とエリ。
いらっしゃいませ。
お~。やっほ。
ただいま。
おかえり。
人のいない店内。
ここは相変わらず暇だねぇ。礼は笑いながら言う。
あたしも客だったらあんま来たくないしなぁ。
そんな言い方ねぇだろ。
保はエリにエプロンを渡す。
ねぇ、たもっちゃん、礼の結婚式来んの?
来るも来ないも、会場でハンバーガー作ってくださぁい。って礼に言われちゃってるからさぁ。
そうなの?
うん。
礼はさ、いい男捕まえたよなぁ。
ありがとう。
礼と多田先生、ほんと仲良いよね。
ケンカとかしたことないでしょ?
う~ん?まだないかも。
いいなぁ。優しいし包容力あるし。
やっぱ男は年上だよな。
女は男で変わるんだなぁ。
えっ?
だってさ、ここに来てる時は健なんかとよくケンカしてただろ。
エリは思い出し笑いをする。
おぉ~。噂の男登場。
いらっしゃぁい。
多田さんがショーグンにやってきた。
こんにちわ。
先生さ。ちょっとわりぃんだけど、俺今から出かけなくちゃいけねぇんだよ。
だから、食いもんだせねぇわ。
あぁ、むしろその方が助かります。
あまりのショックで上着を落とす保。
礼とエリは笑う。
まぁ~、ケンゾー君。ずいぶん久しぶりねぇ。
挨拶する幹雄と鶴。
こんにちわ。
お父さん。ケンゾー君たちきたわよ。
えぇ。。。礼、多田さん。
私は未だに2人の結婚は認めておらん。
これから先も祝福する気持ちになれないことは明々白々なので、今のうちにとっとと別れて、、、
はい。カット、カット。
あのぉ、ちょっとざっくばらんすぎると言うか。
何だ、本音で言っちゃいかんのか。
お父さん!
えぇ、あの、これは結婚式の2次会で流すサプライズビデオなんで、
ざっくばらんな感じといえばまぁそうなんですけど。
わかった、わかった。
もう一度撮りなおし。
礼、多田さん。
ご結婚おめでとう。
いやぁ、しかしまぁ、正直なところ私は、、、今でも、こんなに早く結婚する必要はないと思ってる。
もぉ~お父さん!
いいから。
私が結婚する時も、妻の父親に猛烈に反対をされた。
ずいぶん理不尽な人だったと思ってる。
しかし、礼が生まれた時、初めてそのお父さんの気持ちがわかった。
この子がやがて誰かのもとへ、嫁いで行く日が来るのかと思うと、胸が潰れそうになって困った。
娘はずっと昔から手のかからない子でしてねぇ。
手がかからない分、かえって心配でねぇ。
どこかで、無理をしてるんではないか。
どこか誰にもわからないところに、自分だけの悲しみを溜め込んでいるんではないか。
そんなとき、礼が、こんなことを言ったんです。
多田さんは私の弱さを全て知った上で、受け止めてくれる素晴しい人だと。
もしかしたら、多田さん、私はあなたに嫉妬していたのかもしれません。
23年間ずっと一緒に暮らしてきたのに、私たちには終ぞ見せなかったものを、
あなたには素直に見せていたんですからね。
あの子がねぇ。。。
感動する幹雄と鶴。
どうか、、、どうか、娘を幸せにしてやってください。
隣でお母さんが涙を流す。
よろしくお願いします。
涙をこらえながらお父さんは最後の言葉を言った。
結婚は2人だけのものではない。
お父さん最高だ。あんた最高だ。
鶴はお父さんに抱きついた。
幹雄は鶴を殴る。
お前何やってんだ。
両親や兄弟を含めた、家族みんなの上に成り立っている。
過去の自分はその重みに耐えかねて、酒に逃げる以外の方法が見つからなかった。
礼への思いは、結婚と言う現実に、いとも簡単に押しつぶされた。
結婚式場を下見する礼と多田さん。
本当に来ちゃったね。ここまで。
うん。知り合ってからあっという間だったね。
いろんなことが、ついこの前みたい。
あれ?もしかしてマリッジブルー?
ううん。
本当に僕でいいと思ってる?
もう。何言ってんの。
あの日に言ってくれたでしょ。
二十歳の誕生日を迎える日。
やってみなければ、そこに答えがあるのかどうかもわからない。
もし、そこに答えがなかったとしても、また別の問題を見つければいいって。
あの言葉があったから、今こうして2人で立ってるんだなぁ。ってしみじみ思う。
微笑む多田さん。
あんなに泣いたこととか、辛かったこと。
今、こうして思い出として話せるようになるんだから。
時間がすぎるのってあっという間。
うん。そうだね。
笑顔の多田さん。
いこっか。
うん。
式場を出ようとする多田さん。
ねぇ、まだ、、、私に一度も聞いたことなかったよね。
ん?
あの日なんで泣いてたか。
二十歳の誕生日を思い出す。
涙を流す礼にハンカチを渡す多田さん。
ごめんなさい。
もしかして、泣かせてしまうほど退屈でした?
聞かないの?
うん。いいんだ。
僕の知らない礼がいてくれたからこそ、今の礼がいるんだし。
そういうこと、全部ひっくるめて礼のことが好きだから。
それに、あの時は偉そうに話してたかもしれないけど、
僕も過去に似たような経験をしたから言えたんだよね。
え?
過去があったからこそ、こうして出会って、今ここにこうしていられると思うから。
うん。
礼も僕の過去全て知ってるわけじゃないでしょ。
うん。
中学の時、好きな女の子に何考えてるかわからない。ってふられたり。
礼は笑う。
失恋のショックで意味もなく丸坊主にしたり。
そんなことあったの?
うん。
これからのことのほうが、ずっと大切だと思うんだ。
これまでの別々の過去より、これから2人で過ごす時間を、
僕はずっとずっと大切にしていきたいと思ってる。
礼は微笑む。
保が大きな荷物を抱えてショーグンに帰ってくる。
どうしたの?
えっ?インテリアを一新しようと思ってさ。
はっ?
お前、味はいいのに客が来ないっちゅうのはおかしいだろ。
インテリアのせいじゃないと思うんだけど。
変な置物ばかり出てくる。
こんなの置いたらますますお客さん来なくなるよ。
そんなことないって。
アフロの置物が出てくる。
何これ。
押してみ。
ボンバヘーッド!
ボンバヘー!ってどんだけぇ!
すると、アフロのお客さんが来る。
もう一度押す。
すると、またアフロのお客さんが来る。
次は2回連続で押す。
すると、アフロ2人が一緒にやってくる。
保が押してみる。
ボンバイエー!
ボンバーイエ?
エリと保は顔を合わして言う。
アントニオ小猪木登場。
再び礼の実家へ場所が移る。
おい、健先行くぞ。
お父さん、みなさんお帰りよ。
健はおじいちゃんの写真に気付き手を合わせる。
ずいぶん、気にいられてたみたいね。
よく話してたのよぉ。
またケンゾー君の家に遊びに行くって。
最後まで礼の婿はあいつで決まりだなって言ってたわよ。
今度やろうは馬鹿野郎。明日やろうも馬鹿野郎。思い立ったらすぐ何でもやらなきゃダメだ。
後悔するなよ。いつも明日が来ると思ったら、痛い目みるぞ。
礼のこと頼んだぞ。
えっ?
うちの家系にはろくでもない男がちょうどいい。
健はおじいちゃんの言葉を思い出した。
礼もすっごい感謝してたっけねぇ。
ケンゾー君のおかげで、じいじに言いたいこと言えたって。
車の前。電話する幹雄。
うん。温泉のパンフレット送っといたから見といて。
あぁ、それ。また折り返す。じゃあね。
誰?優子?
ううん。優子のお母さん。
えぇ~!
だって、お前まだ優子と結婚してないじゃん!
だからぁ、温泉とか連れてって機嫌とんないといけないの。
どうやったら、相手のお母さんと仲良くなれるんですか?
知りたい?
知りたい。
タバコをくわえる幹雄。
あっ。なるほどね。
ライターを出しタバコに火をつける鶴。
健はアルバムを見ていた。
昔はよぉくうちに遊びに来てたわね。
はい。小学生くらいのときはしょっちゅうお邪魔してましたね。
ほんと。
小学生の時に引っ越してきてから大学まで、あなたの名前聞かない日はなかったわ。
あなたが遊びに来なくなってからも、礼から話を聞いてたのよ。
何かって言えば、ケンゾーがね。ケンゾーがね。って。
思い出し笑うお母さん。
ずいぶんとケンカもしてたみたいだけど、礼にとってずっと特別な存在なんだなぁ。
っていうのは母親の私でもわかるくらいだったから。
じゃなきゃ、あの子がケンゾー君と同じ高校行きたい。なんて言わないもの。
健は驚いた。
そうだ。
このときのことケンゾー君覚えてる?
1枚の写真を指さした。
ソファに座る2人。
すいかを食べる笑顔の礼。ひじを怪我している。
隣には健がムスッとした顔で座っている。
健はソファを見る。
えぇ、覚えてます。
俺さ、こんなこと出来るようになったんだぜ。
健は礼に逆上がりから飛行機をして見せた。
私だって出来るもん。
礼は着地に失敗して肘を怪我した。
先生が駆け寄ってきた。
女の子の体に傷つけるようなことして、もし痕残ったらどうするつもり。
健は診察室の前で礼を待っていた。
礼とお母さんが出てくる。
待っててくれたの?
お母さんは驚き健に言う。
健は立ち上がる。
思わず笑っちゃったわよ。
お母さんの方に向き直る健。
小学5年生があんなこと言うんだもの。
写真を見つめる健。
おじいちゃんも言ってたけど、あたしもしかしたらケンゾー君と礼が結婚するじゃないかって思ってたのよ。
女の勘って当たらないものね。
笑いながらお母さんは言う。
帰りの車。
やっぱお父さんの言葉っつうのは反則だよな。
ん?
礼の親父に会ったのって初めてなんだけど、何か感情移入しすぎで泣きそうになっちゃった。
あぁいうの見ると、やっぱ結婚てすげぇよなぁ。
でも、結婚なんてすると物事の優先順位変わっちゃうんだろうな。
家に金入れたり、嫁を大事にしたり、嫁のお母さんを大事にしたりさ。
じゃあ、幹雄が結婚したら俺らって何位くらいになる?3位とか4位?
鶴はランクキング外。
何で俺だけランクキング外なんだよ。
幹雄をこしょばす鶴。
今、礼の中で俺は何番目にいるんだろう。
結婚したら、何番目になってしまうんだろう。
受賞パーティ会場。
何で俺たちウエイターなの?
人手が足りねぇからしょうがねぇんだよ。
雇えばいいのに。
文句を言うな
来場者に礼を紹介する多田さん。
それを見つめる健。
ショーグンにて。
どんだけミルクシェーク飲むんだよ。
エリは怒っていた。
もうどうして今日に限ってこんなに忙しいの!
なぁ。ビックリしたよなぁ。
バーガー生活15年、こんなに客入ったの初めてだからよぉ。
インテリアの効果がこんなにすごいとは思わなかった。
まだ全然飾ってないじゃん。
あっそうだ。忘れてた。
犬の置物を出す保。
ねぇ、それどうするの?
えぇ?さてどこに飾るかなぁ。
エリ。猫。
犬だし!
多田さんの授賞式が始まった。
多田さんを見つめる礼を健は寂しそうに見た。
似合わないねぇ。その格好。
うるせぇなぁ。
私はぁ?どう?似合ってる。
鏡見てこいよ。
ちょっと。ひどくなぁい?
けっこう可愛いのに。
礼。ちょっといい?
じゃっ。
これまでの14年間、礼の横にいるのが当たり前だった。
そんな当たり前のことが、もうすぐ叶わなくなってしまう。
声をあげて笑いあった日々も。
穏やかに流れていく時間も。
あんなに怒らせた日々も。
あんなにケンカした日々も。
もう手の届かないところに消えてしまう。
礼が、世界で一番好きな人が、他の男と結婚してしまう。
健は礼の肘に残る傷を見つめる。
小学5年生のことを思い出す。
待っててくれたの?
僕が責任をとります。礼を一生面倒みますから。
まぁ。驚くお母さん。
よろしくお願いします。
礼は笑顔で答えた。
あんなに小さな頃にいえた言葉が、
年を重ねれば重ねるだけ、口に出せなくなって、
思いが募れば募るほど遠くなった。
あの時交わした約束は、今ここに消えようとしている。
健は絶対自分から諦めたりしなかったよね。
ほんと往生際が悪いっていうかさぁ。
でも、そういうところが好きだったんだよねぇ。
会場を出て行こうとする礼の後姿を見つめる健。
健は追いかけて会場を飛び出した。
礼の手を掴み走り出す。
ちょっと、どうしたの?
ショーグンに場所が移る。
何でそんな顔するかなぁ。
これから、パーティに行くんでこんなくっだらないことにつきあってる暇ないんです!
あぁ!ちょっと待て。エリちょっと待て。
これだけ見て。お願い。
一番大きな包装を破る保。
探すの苦労したんだよ。
我が愛すべきナンバー1ブランド。
ドント・ノック・ニューヨーク。
お疲れ様でしたぁ。
なっ、なっ、もうちょっと何かないのかよぉ。
保が持ってきたのはドント・ノック・ニューヨークの看板だった。
自由の女神の冠の先には健がつけた婚約指輪がはまったままだった。
健は礼を連れてひたすら走っていた。
礼は健をどうしていいのかわからない表情で見ながら連れられるまま走っていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
キャスト
☆岩瀬健…山下智久 ☆吉田礼…長澤まさみ
☆奥エリ…榮倉奈々 ☆榎戸幹雄…平岡祐太
☆鶴見尚…濱田岳
☆妖精…三上博史(特別出演)
☆多田哲也…藤木直人
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