ぐ~たらにっき
Lazy Diary
『最後の一瞬に何を賭けますか』
男の名前は岩瀬健。
過去に戻っても自分の思いを告げられず
2人が交際するのを阻めなかった哀れな男である。
かの有名なエイブラハム・リンカーンはこう言っている。
あなたが転んでしまったことに関心はない。
そこから立ち上がることに関心があるのだと。
失敗にめげず再び立ち上がるのか、。
教訓を得て別の道を目指すのか、。
それとも自分の不幸を嘆き続けるのか。
今、この男の真価が問われている。
忘れることなんて出来ない。
やっぱり礼が好きだ。
一番辛い道を選んだな。
お前の辛い旅も、いよいよフィナーレだな。
そして、ついにスライドショーは最後の写真を迎えてしまった。
はたして、この男に幸せが訪れるのであろうか。
いよいよ、このお写真が最後の1枚となります。
お2人が結婚を決めた日に撮影された、記念すべきお写真であります!
そして、最後の写真が映し出される。
健は写真から目を逸らし礼の方を見る。
あれ?
何か後ろに写ってない?あれ。
ねぇ。もしかして、あれ健じゃないの?
え?えぇ!?
健なのあれ?背後霊だよ。こぉわい!
お前はちょっと黙ってろ。
幹雄が鶴の口を抑える。
俺、このとき写ってたんだ。。。
こんなにずっと一緒にいるのに、ケンゾーは何もわかってないよ。
何もわかってない。
礼が多田さんとの結婚を決めた日。
礼に言われた言葉は、、、何にもわかってない。だった。
礼はこの日を境に、一度もケンゾーと呼ばなくなった。
結局過去に戻ったところで、何も変わらなかった。
どんなにあがいたところで、何にも変わらなかった。
無駄だったんだ。
ハーレルヤハーレルヤ♪
本当に無駄だったと思ってるのか?
お前は何のために過去に戻ってる?
後悔してることをやり直すためです。
この写真の日に後悔はないのか?
いや、ありますけど。。。
これが最後の写真だぞ!
彼女の隣に座れるかどうかはわからない。
ただ1つだけ確かなことは、チャンスは後1回しか残されていないということだ。
お前にチャンスを与えたこと、、、俺に後悔させないでくれ。
妖精が何かを持ってくる。
最後の晩餐は豪勢にいこうじゃないか。
あんだけ食ったのに、こんなにボリューミーなの。
お前が最後の力を振り絞るなら、俺も全力をつくす。
それが筋ってもんだろ?
そんな筋通さなくても。
チキンを一口食べる妖精。
求めよ。さらば与えられん。
ハレルヤァチャンス!
え?
何なんだよ。
ちゃんと下げてろ。
健は頭を上げようとした時上から抑えられた。
係長?
お願いします。
うちの新人の記念すべき最初のお客様になってはいただけないでしょうか?
営業先?
まだ入社したてのころか。
申し訳ないけど、ホワイトボードって1個あれば十分なんだよね。
うちそんなに余裕ないし。
まぁ、そうおっしゃらずに。
今一度考えていただけないでしょうか?
仕事なんかしてる場合じゃないんですけど。
健は頭をあげて会議室を抜け出した。
おい。岩瀬。岩瀬。
会社を出たところで電話をかける健。
もしもぉし。
今どこ?
えっ?研究室だけど。
そこ動くなよ。
はぁ?
今から、そこ行くから動くなよ。
何でよ。
いいから。
健は電話を切った。
おぉい。どうしたんだよ。
係長が追いかけてきた。
大事な用があるんで失礼します。
見捨てないでくれよぉ。
座り込む係長。
ここで君に逃げられたら私の責任が問われる。
これ以上出世が遅れたら、もう子供達を養っていけないよ。
三つ子だぞ!
うちの三つ子ちゃんを犠牲にしてまでも行かなきゃいけないことなのか?
犠牲って。そんな大げさな。
じゃあ、行けばいいじゃないか。
私達、家族の屍を乗り越えて、行けばいいじゃないか。
泣き出す係長。
泣きたいのはこっちですからぁ!
大学で礼とエリが話している。
やっぱり、あたしたち卒業して寂しい?
う~ん。少しだけね。ほんとちょっとだけ。
でもまぁ、多田先生がいるから寂しいってことはないかなぁ。
ちょっと茶化さないでよ。
笑いあう2人。
ねぇ、もう付き合ってどのくらい?
1年半くらいかなぁ。
そんなに経つんだぁ。へぇ~。
あっという間だよね。
色んなことが本当にあっという間。
じゃあ、あたしはバイト行こっかなぁ。
じゃあ、後でね。
あれ?先生も大学に残ってるの?
そこに伊藤先生がやってくる。
おぉ、お前らか。
やっと陶芸始めたんだ。
いや。まだ始められる段階に達していない。
ひげも生やしたし、念願のろくろも手に入れたんだがぁ。
何が足りないんですか?
嫁さんだよ。
小指を立てて言う。
嫁さん?
そこが揃わないと陶芸は無理だ。
ひげ、嫁さん、ろくろだろ。
まだ間違ってる。
えぇ、左から、
健一、健二、ソウタロウ。
ずっこける健。
係長に三つ子の写真を見せられ名前を教えられていた。
そこは普通健三じゃないですか?
健三だけ、なぁんかピンとこなくてな。
ピンとこないあだ名ですみませんねぇ。
係長。
ん?
実は、僕も大変な日を迎えているんです。
今日、好きな人がプロポーズされちゃんですよ。
今日どうにかしないと、僕は一生この先幸せになれないんですよ。
そうかぁ。君も大変なんだなぁ。
本当にわかってもらってます?
そんなに行きたいんなら、行けばいいじゃないか。
食事も満足に与えられず、天国に召されたうちの三つ子ちゃんたちが
君の幸せを天国から祝福してくれるだろうよ。
もう、どうすればいいんですか!
今週のノルマを達成出来れば、何もいいませんよ。私は。
ノルマ?
後2台。後2台売れさえすれば、君が早退しようが何しようが文句は言いませんよ。
じゃあ、行きましょうよ。もう。
従来の製品よりもサイズをコンパクトにしまして、移動性と機能性を格段にアップさしたのがが当社一押しのこの商品。
こちらが移動式ミーティングボード!
資料を机に置かれる健。
カッチーン。
でも、礼に一刻も早く会うために我慢だケンゾー。
幹雄の仕事先。
カットォ!
幹雄、ちょっと来い。
何桜ヒラヒラ降らしてんだよ。
ハラリハラリって台本に書いてあんだろ。
えっ?どう違うんですか?
口答えすんじゃねぇ!
すみません。
そこに鶴が。
幹雄。オス。
丁度いいところに来た。
監督、今日手伝ってくれる友達来ました。
あっ。こんちわ。
おう。じゃあ、あそこに代わりに立って。
早く早く。
たかぁく!もっと背をたかぁ~く!
何でさ。俺怒られなきゃいけないの?身長で。
あたし、こんなとこでバイトしてていいのかなぁ?
ん?
ショーグンでバイト中のエリ。
幹雄は好きなことやってるし。
礼は大学院でしょ。
健ですら就職して働いてんだよ。
鶴もまだフリーターだろ?
鶴と一緒だから余計焦ってんじゃん。
俺はビックな男になる。とか言ってるからどんな努力をしてるのかと思ったら、
牛乳を毎日2リットル飲んでるんだよ。2リットル。
3リットルだっけな?
まぁいいや。
エリはカウンターの席から立って鶴のことをマスターに言う。
そして、ソファに座る。
あんなにちっちゃいのにさ、声だけは大きいし。
男らしさもなんか微妙に違う気がするしさぁ。
お前さ、鶴の話するとき楽しそうだよなぁ。
いやいや、そんなわけないじゃん。
笑顔のエリ。
大学の研究室。
礼の作業中に多田さんが入ってくる。
あのぉ、一緒に来てほしい場所があるんだけど、今平気?
うん。大丈夫。
何だか変な感じの多田さんは先に研究室を出ていった。
礼は不思議そう。
健の営業。
すみません。1分でいいのでご説明だけさせていただけませんか?
お願いします!商品には絶対の自信があります。
どうか1つ、置かせて下さい!お願いします!
こちらの商品、最新の機能が満載でして、
見やすい、使いやすい、書きやすい。
まさに究極のスーパーホワイトボーーード!
ダメだ。売れねぇ~。
ベンチに寝転がる健。
はい。
係長が缶を渡す。
あっ。すみません。
ベンチに座る2人。
あぁ、申し訳ない。
何で謝るんすか?
いやぁ、行って来い。彼女を奪って来い。
って、快く送り出してやれない上司を許してくれぇ。
いや、係長は全然悪くないですよ。
僕の個人的な問題ですから。
それに行ったとしても、奪い取れる気もしないですし。
それはわからないなぁ。
実はね。うちの女房、昔ミスユニバーシアード日本代表だったの。
マジですか?
マジ。
まぁ、あたしなんかが手の届く人じゃなかったわけだ。
駄目で元元っていい言葉だとは思わないか?
そうっすかねぇ?
周りを見てみろよぉ。
駄目元でやってることが、ことごく駄目だったら人生やってらんないけど、そうじゃないだろぉ。
駄目元がたまに成功しちゃうから人生面白いんだよぉ。
失敗しても当たり前。成功したら男前。
健は少し笑う。
係長はベンチから立って伸びをする。
駄目元ってさ、俺たちみたいなしがないサラリーマンのためにあるような言葉だよな。
あの、ちょっと心当たりあるんで聞いてもいいですか?
ソクラテスは赤い飲物を口に含む。
そして吐く。
何じゃこりゃぁ!
何で別れのシーンで血ぃ吐いてんだよ!
幹雄ぉ!
お前の連れてきたエキストラ。。。天才だな。
えっ?
ハリウッドも狙えるよ。
大スターも夢じゃねぇ。
何も言わずにこれ買って。
健は幹雄にホワイトボードの資料を見せる。
係長はスタジオの中へ。
うちの会社には必要ねぇし。
じゃ、お前個人で買えよ!
バーカ。そんな余裕あるわけねぇだろ。
買ってやれよ。社会人。
これがこれでさ。
えっ!
幹雄は優子が妊娠したということを教えた。
今日の朝いきなり言われてまいったよ。
あんまり遠くに行かないでくださいよ。師匠。
やっべぇな。
鶴が監督に呼ばれる。
幹雄。タイムスリップしてきてる。
ほぉ~。
前にも未来から戻ってきただろ。
また来たんだ。
もっとテンションあげろよぉ~!
何か久々だな。いつ以来?
去年の初日の出以来。
あぁ、あのドント・ノック・ニューヨークのときだ。
ていうかさ、お前のせいで過去に戻ってくんのこれで最後なんだから。
せめて、ホワイトボードくらい買えよ。
全然意味わかんないんだけど。
だから、お前が披露宴で用意したスライドショーの写真に戻ってきてんの。
え?タイムスリップって俺も関係あんの?
お前が鍵握ってんの。
へぇ~。そうなんだ。
最後がプロポーズの時の写真てセンスねぇから。マジで。
幹雄は落ち込む。
おぉ~、ホワイトボードよ。
健と幹雄はスタジオの方を見る。
何故お前は人前にさらされながらもそれほどまでに…
幹雄ぉ~!
はい。
何でうちの現場にホワイトボードがねぇんだよぉ。
係長が健に合図を送る。
駄目元で来てみるもんだなぁ。
どうもありがとうございました。
いえ、どうもこちらこそ。
ありがとうございました。
幹雄、買ってもらったお礼に1ついいこと教えてやるよ。
何?
お前のこれ、これしてねぇよ。
健は優子が妊娠してないということを教えた。
はっ?何で健がわかんだよ。
どっから来てっと思ってんだよ。
じゃあな。
別の営業先へ。
こちらは最新の機能が満載でして。
いやいや、そういう機能は求めてないんだよね。
昔ながらの黒板の方が全然いいよねぇ。
あはははは。
それでしたら、こちらに黒板がついてるものもあるんですが、いかがでしょうか?
いかがでしょうか!
契約成立。
しゃ~!
ゲームセットォ!
係長とハイタッチする健。
いや、ありがとう。
君のおかげでノルマ達成できたよ。
何いってんすか、係長のおかげですよ。
きっと大丈夫だよ。彼女を奪い取る大作戦。
駄目元でいってきます。
失敗しても当たり前。成功したら男前。
行ってきます!
笑顔で走り出す健。
多田さんと礼は多田さん設計の建物の前にいた。
自分の設計図が、初めて形になったのがこの建物なんだ。
ふ~ん。そうなんだ。
出来上がっていく建物を見ながら、反省したり納得したり奮い立ったり、
色んなことを気付かせてくれた建物なんだよね。
じゃあ、ここが多田先生の原点なんだ。
うん。そう。
人生の節目を迎えた時、必ず来るようにしてる大切な場所なんだ。
健は走りながら礼に電話する。
しかし、通じない。
何で通じねぇんだよ!
ホールに入った2人。
あの教育実習の後もここに来たんだよ。
ふ~ん。そっかぁ。
ここで色々反省したんだ。
そだね。礼に言われたこと何度も反省した。
ず~っと平行線のままだったよ。って。
私、そんなこと言った?
うん。でも、あの一言がなかったら大学残って講師やろうって思わなかったし。
こうして礼と一緒にいることもなかった気がする。
僕と結婚してください。
驚く礼。
多田さんは舞台に立つ。
僕と結婚してください!
礼と結婚したいという思いは、この先何年経っても変わらることのない答えなんだ。
もう自分の中では答えは出てるのに、礼に伝えるの先延ばしにしたくなかった。
大学を卒業したばっかりで、そんなことすぐ考えられないかもしれないけど、
もし、礼の中でも答えが出せるのであれば、この先の人生ずっと共有していきたい。
すぐ返事をしなかった礼。
よーし、そろそろ準備いくかぁ。
ちょっとぉ、傘がないわよ。
傘!
鶴!お前何やってんだよ。傘だよ。傘。
鶴ぅ。コーヒー。
はい。すんません。
あっち!
熱いじゃねぇか!
監督のハンカチで零れたコーヒーを拭く鶴。
それ、おれんだろ!
はい。タオルタオルぅ。
幹雄は何やってんだよ。
鶴は撮影現場でこき使われていた。
撮影現場の外。
ごめん。嘘ついてた。
幹雄があたしのことどう思ってるのかわかんなくなって。
結婚とか考えてるのかなぁ。って。
試してたってこと?
ごめん。ほんとごめん。
幹雄に近付く優子。
仕事あるから戻るわ。
結婚するにしても金かかるだろ。
えっ?
子供いなくても、わがままで贅沢な女1人養うだけでも大変なんだよ。
幹雄ぉ!
あははははは。
笑いあう2人。
2人は抱き合いメリーゴーランド。
その光景を見た鶴は固まる。
礼!
研究室に駆け込む健。
それに驚いて資料をばら撒いてしまう多田さん。
礼は?
あぁ、岩瀬君。実はさっき礼にプロポーズしちゃいました。
えっ?
冷静になってみると、思い切ったことしてしまったかなって。
で、礼はなんて。
いや、まだ返事は聞いていません。
岩瀬君が礼と過ごしてきた時間に比べたら、僕らが過ごしてきた時間なんて本当に短いものなのかもしれません。
でも、これから時間を積み重ねて…
じゃあ、何で結婚なんですか!
はい?
そんな焦って結婚決める必要あったんですか?
焦ってるつもりは全然ないんです。
自分としては何度も何度も考えて時間をかけて答えをだしたつもりなんです。
あぁ。学生のことテストが早く終わってしまった後に時間があまるってことがありませんでした?
あの時間が苦手だったんですよね。
自分の答えはこれ以上考えても変わらない。
そう思えたんで、もうプロポーズしていいかなぁ。って思ったんです。
もし、礼の答えも一緒なら早く2人の時間を始めたいなぁ。って。
失礼します。
岩瀬君。
健は研究室を飛び出した。
やっぱりもう無理だ。
弱気になりそうになる自分を振り切りたくて、
気が付いたら走り出していた。
俺は、駄目元をやりに来たんだ。
礼と多田さんの答えを知るために来たわけじゃない。
自分なりの答えを出しに来たんだ。
礼とエリは2人で歩く。
礼は、どうすんの?
こういう人と結婚できたら幸せなんだろうなぁ。って思った。
この先、そう思える人とまた出会えるかもしれないし、もしかしたらもう二度と出会えないかもしれないし。
礼は立ち止まる。
ほんと難しいよね。
ただ、自分が幸せになるってだけなのにさ。
もしもし。
健!逃げんなよ。
何が?
初任給でみんなに焼肉おごるって約束しただろうが。
もう、礼とエリ向かってるってよ。
礼とエリは焼肉屋の前に着く。
しかし、礼は入ろうとしない。
看板にぶつかる健。
またお前かよ。
ドント・ノック・ニューヨークの看板だった。
再び走り出す健。
ATMの前。
残高23円。
鶴が焼肉屋に着く。
鶴1人?
幹雄がこれさ。
でも、今日はもうすぐ来ると思うよ。
あれ?礼は?
実は。。。
エリは鶴に耳打ちする。
礼は歩き、健は走る。
お肉が到着。
なぁ~。おいしそう。
プロポーズかぁ。
お腹すいたよぉ。
プロポーズなぁ。
先食べちゃおうか。
プロポーズねぇ。
ねぇ、聞いてんの?
エリを見つめる鶴。
俺と結婚してください。
店内の音楽が止まってしまう。
やだ。
音楽がなりだす。
じゃあ、俺のお嫁さんになってください。
やだっていってんじゃん。
嫁にこないか?
行・か・な・い。
エリの隣に移動するエリ。
毎日、俺のために味噌汁を作ってください。
やだって。
生まれ変わってもあなたと結婚したいです。
やだ。
じゃあ、俺と付き合ってください。
いいよ。
お肉を焼き始めるエリ。
笑顔のエリ。
えっ?
わけのわからない鶴。
俺と付き合ってください。
いいよ。
えぇ~?本当に?本当に?
嫌なの?
全然。
はい。あ~ん。
鶴は口をあけて待つ。
あっ。そういえばさ、健どうしたの?
鶴は口をあけたまま待つ。
健は走っていた。
本当に無駄だったと思ってるのか?
お前は何のために過去に戻ってる。
これが最後の写真だぞ!
俺にチャンスを与えたこと、俺に後悔させないでくれ。
過去に戻ってくるたびに、俺はひたすら走り続けた。
何が正しい道かはわからないけど、
ただただ走り続けることしか出来なかった。
礼。
君の心に何か届いているんだろうか。
離れていこうとしている君との距離を、少しでも変えることが出来たんだろうか。
でも、1つだけ確かなことがある。
今でも礼のことが好きだ。
どんなに離れてしまったとしても、この気持ちだけは変わらない。
礼。
お前のことが、、、世界で一番好きだ。
礼は公園を歩く。
驚いて立ち止まる礼。
そこには健が立っていた。
どうして?
一番辛い記憶をやり直すために、俺はここに立った。
ここが最後の決戦の場所だ。
多田さんに聞いた。
そうなんだ。
驚いたままの礼。
ビックリしたでしょ。
あたしなんかがプロポーズされるなんて夢にも思わなかった?
そうだな。
結婚とかプロポーズとか家庭とか、もっとずっと遠くにあるものだと思ってた。
ついこの前、高校卒業して、大学入ったと思ったら、あっという間に卒業でさ。
ケンゾーなんて、もうスーツ着てんだもんね。
一昨日までユニフォーム着てた気がするのに。
言い過ぎだろ。
少しの沈黙。
礼は話しだす。
あたし、、、多田先生のプロポーズ受けようと思うの。
いきなりで驚いたけど、うれしかったの。
多田先生と向き合いたいな。って思った。
だから、、、
やめろよ!
えっ?
そんな簡単にプロポーズ、、、受けんなよ。
ケンゾーの言いたいことすごくよくわかるよ。
まだ22だし、建築のこともっと勉強したいからって大学院いったんだし。
今すぐ焦ってすることないって。
だったら、もっとちゃんと考えてからでもいいだろ。
たった1年ちょっとだろ。
1年で、、、多田さんの何がわかんだよ。
そんなのわかんないよ。
わかんないことたくさんあるよ。
多田先生だって、私の知らないことたくさんあると思う。
でも、大切なのって、、、これから、その人と向き合っていきたいかってことだと思うの。
もっともっと多田先生のこと知りたいと思うし、私のことも知ってほしいと思う。
そう思えた人なの。
健は何も言えない。
じゃあ、行くね。
歩き出した礼に健は言う。
相手のことよくわかんねぇのに、結婚てなんだよ!
たいして知りもしない人間と、結婚してどうすんの。
ていうか、そんなんで結婚決めんのバカだろ。
返ってくる答えはわかっていたはずなのに、
過去と同じ言葉が思わず口をついて出た。
礼は振り向く。
こんなにずっと一緒にいるのに、ケンゾーは何もわかってないよ。
何にもわかってない。
礼は歩き出す。
健は追いかけた。
そして、後ろから抱きしめた。
頼む。
行かないでほしい。
俺と結婚しろよ。
どうして?
どうして今そんなこと言うの?
礼は健の腕をほどいた。
本当に何もわかってないよ。
何にもわかってない。
礼は涙をこらえるようにして再び歩き出した。
噴水の前で健は座る。
ポケットから何かを取り出す。
人生で初めて買った指輪。
給料3ヶ月分とはいかなかったけど、
どうしても買いたくなって、初任給全額で勝負をかけた婚約指輪。
健は指輪を左手の薬指にはめた。
サイズを聞かれて、礼の指にはまらないと嫌だったから、
一番大きいサイズで。と頼んだ。
俺の指でもブカブカだ。
指にはめた指輪を見つめ健は涙を流す。
礼は多田さんの待つお店に着く。
ごめんね。待たせちゃって。
それはいいんだけど、、、どうかした?
礼の表情を見て多田さんが聞く。
大丈夫。
料理に悪戦苦闘の多田さんを見て礼は微笑む。
多田先生。
へ?
私、、、多田先生のプロポーズ受けることに決めました。
えっ?
多田先生と結婚します。
本当に、僕でいいんですか?
笑う礼。
はい。
答えを聞いて安心した多田さん。
また、お前かよ。
健はドント・ノック・ニューヨークの看板の前に来た。
ポケットから指輪を出し看板に。
その時、礼は多田さんから婚約指輪をもらった。
ありがとう。
笑顔の礼。
看板にはめられた健の婚約指輪。
健は歩き出した。
綺麗に光っていた。
健は礼と多田さんのいる店の前で立ち止まる。
店の中では2人が楽しそうにしている。
駄目元は、、、やっぱり駄目なまんまで終わってしまった。
これで最後だ。
本当のゲームセットだ。
シャンパンを持つ2人を見つめる健。
シャッターが切られた。
未来に戻った。
健は写真に目をやる。
あれ?
あれ、後ろになんか写ってるよ。
ねぇ、もしかして健なんじゃないの?
健なの?これ?
背後霊だ。背後霊。うわっ。こわぁ。
幹雄が鶴の口を抑える。
結局、どうあがいたところで、俺と礼は結ばれる運命じゃなかったんだ。
これで終わりだ。
笑う礼を見つめる健。
そして、下を見る。
いよいよ次のお写真が最後の1枚となります。
えぇぇ!
えっ?
健は思わず声を出し会場の注目を集めてしまう。
これで満足?
えっ?
幹雄が健に話しかける。
プロポーズの日の写真が最後だったのが、気に食わなかったんだろ。
幹雄、お前。
これで貸し2だからな。
健は幹雄のおかげで増えた写真を見つめた。
建築学会新人賞受賞記念パーティーで撮られた写真。
そして、時が止まった。
まさか、また会うとはな。
健は幹雄の隣から出てきた妖精を見る。
このお友達に感謝しろ。
これが正真正銘、これが本当のラストハレルヤチャンス。
健は心を決めた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
キャスト
☆岩瀬健…山下智久 ☆吉田礼…長澤まさみ
☆奥エリ…榮倉奈々 ☆榎戸幹雄…平岡祐太
☆鶴見尚…濱田岳
☆妖精…三上博史(特別出演)
☆多田哲也…藤木直人
公式HP
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第6回感想 | 第7回感想 | 第8回 感想 レビュー | 第9回感想
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過去に戻っても自分の思いを告げられず
2人が交際するのを阻めなかった哀れな男である。
かの有名なエイブラハム・リンカーンはこう言っている。
あなたが転んでしまったことに関心はない。
そこから立ち上がることに関心があるのだと。
失敗にめげず再び立ち上がるのか、。
教訓を得て別の道を目指すのか、。
それとも自分の不幸を嘆き続けるのか。
今、この男の真価が問われている。
忘れることなんて出来ない。
やっぱり礼が好きだ。
一番辛い道を選んだな。
お前の辛い旅も、いよいよフィナーレだな。
そして、ついにスライドショーは最後の写真を迎えてしまった。
はたして、この男に幸せが訪れるのであろうか。
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あれ?
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何もわかってない。
礼が多田さんとの結婚を決めた日。
礼に言われた言葉は、、、何にもわかってない。だった。
礼はこの日を境に、一度もケンゾーと呼ばなくなった。
結局過去に戻ったところで、何も変わらなかった。
どんなにあがいたところで、何にも変わらなかった。
無駄だったんだ。
ハーレルヤハーレルヤ♪
本当に無駄だったと思ってるのか?
お前は何のために過去に戻ってる?
後悔してることをやり直すためです。
この写真の日に後悔はないのか?
いや、ありますけど。。。
これが最後の写真だぞ!
彼女の隣に座れるかどうかはわからない。
ただ1つだけ確かなことは、チャンスは後1回しか残されていないということだ。
お前にチャンスを与えたこと、、、俺に後悔させないでくれ。
妖精が何かを持ってくる。
最後の晩餐は豪勢にいこうじゃないか。
あんだけ食ったのに、こんなにボリューミーなの。
お前が最後の力を振り絞るなら、俺も全力をつくす。
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まぁ、そうおっしゃらずに。
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もしもぉし。
今どこ?
えっ?研究室だけど。
そこ動くなよ。
はぁ?
今から、そこ行くから動くなよ。
何でよ。
いいから。
健は電話を切った。
おぉい。どうしたんだよ。
係長が追いかけてきた。
大事な用があるんで失礼します。
見捨てないでくれよぉ。
座り込む係長。
ここで君に逃げられたら私の責任が問われる。
これ以上出世が遅れたら、もう子供達を養っていけないよ。
三つ子だぞ!
うちの三つ子ちゃんを犠牲にしてまでも行かなきゃいけないことなのか?
犠牲って。そんな大げさな。
じゃあ、行けばいいじゃないか。
私達、家族の屍を乗り越えて、行けばいいじゃないか。
泣き出す係長。
泣きたいのはこっちですからぁ!
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やっぱり、あたしたち卒業して寂しい?
う~ん。少しだけね。ほんとちょっとだけ。
でもまぁ、多田先生がいるから寂しいってことはないかなぁ。
ちょっと茶化さないでよ。
笑いあう2人。
ねぇ、もう付き合ってどのくらい?
1年半くらいかなぁ。
そんなに経つんだぁ。へぇ~。
あっという間だよね。
色んなことが本当にあっという間。
じゃあ、あたしはバイト行こっかなぁ。
じゃあ、後でね。
あれ?先生も大学に残ってるの?
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おぉ、お前らか。
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いや。まだ始められる段階に達していない。
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何が足りないんですか?
嫁さんだよ。
小指を立てて言う。
嫁さん?
そこが揃わないと陶芸は無理だ。
ひげ、嫁さん、ろくろだろ。
まだ間違ってる。
えぇ、左から、
健一、健二、ソウタロウ。
ずっこける健。
係長に三つ子の写真を見せられ名前を教えられていた。
そこは普通健三じゃないですか?
健三だけ、なぁんかピンとこなくてな。
ピンとこないあだ名ですみませんねぇ。
係長。
ん?
実は、僕も大変な日を迎えているんです。
今日、好きな人がプロポーズされちゃんですよ。
今日どうにかしないと、僕は一生この先幸せになれないんですよ。
そうかぁ。君も大変なんだなぁ。
本当にわかってもらってます?
そんなに行きたいんなら、行けばいいじゃないか。
食事も満足に与えられず、天国に召されたうちの三つ子ちゃんたちが
君の幸せを天国から祝福してくれるだろうよ。
もう、どうすればいいんですか!
今週のノルマを達成出来れば、何もいいませんよ。私は。
ノルマ?
後2台。後2台売れさえすれば、君が早退しようが何しようが文句は言いませんよ。
じゃあ、行きましょうよ。もう。
従来の製品よりもサイズをコンパクトにしまして、移動性と機能性を格段にアップさしたのがが当社一押しのこの商品。
こちらが移動式ミーティングボード!
資料を机に置かれる健。
カッチーン。
でも、礼に一刻も早く会うために我慢だケンゾー。
幹雄の仕事先。
カットォ!
幹雄、ちょっと来い。
何桜ヒラヒラ降らしてんだよ。
ハラリハラリって台本に書いてあんだろ。
えっ?どう違うんですか?
口答えすんじゃねぇ!
すみません。
そこに鶴が。
幹雄。オス。
丁度いいところに来た。
監督、今日手伝ってくれる友達来ました。
あっ。こんちわ。
おう。じゃあ、あそこに代わりに立って。
早く早く。
たかぁく!もっと背をたかぁ~く!
何でさ。俺怒られなきゃいけないの?身長で。
あたし、こんなとこでバイトしてていいのかなぁ?
ん?
ショーグンでバイト中のエリ。
幹雄は好きなことやってるし。
礼は大学院でしょ。
健ですら就職して働いてんだよ。
鶴もまだフリーターだろ?
鶴と一緒だから余計焦ってんじゃん。
俺はビックな男になる。とか言ってるからどんな努力をしてるのかと思ったら、
牛乳を毎日2リットル飲んでるんだよ。2リットル。
3リットルだっけな?
まぁいいや。
エリはカウンターの席から立って鶴のことをマスターに言う。
そして、ソファに座る。
あんなにちっちゃいのにさ、声だけは大きいし。
男らしさもなんか微妙に違う気がするしさぁ。
お前さ、鶴の話するとき楽しそうだよなぁ。
いやいや、そんなわけないじゃん。
笑顔のエリ。
大学の研究室。
礼の作業中に多田さんが入ってくる。
あのぉ、一緒に来てほしい場所があるんだけど、今平気?
うん。大丈夫。
何だか変な感じの多田さんは先に研究室を出ていった。
礼は不思議そう。
健の営業。
すみません。1分でいいのでご説明だけさせていただけませんか?
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見やすい、使いやすい、書きやすい。
まさに究極のスーパーホワイトボーーード!
ダメだ。売れねぇ~。
ベンチに寝転がる健。
はい。
係長が缶を渡す。
あっ。すみません。
ベンチに座る2人。
あぁ、申し訳ない。
何で謝るんすか?
いやぁ、行って来い。彼女を奪って来い。
って、快く送り出してやれない上司を許してくれぇ。
いや、係長は全然悪くないですよ。
僕の個人的な問題ですから。
それに行ったとしても、奪い取れる気もしないですし。
それはわからないなぁ。
実はね。うちの女房、昔ミスユニバーシアード日本代表だったの。
マジですか?
マジ。
まぁ、あたしなんかが手の届く人じゃなかったわけだ。
駄目で元元っていい言葉だとは思わないか?
そうっすかねぇ?
周りを見てみろよぉ。
駄目元でやってることが、ことごく駄目だったら人生やってらんないけど、そうじゃないだろぉ。
駄目元がたまに成功しちゃうから人生面白いんだよぉ。
失敗しても当たり前。成功したら男前。
健は少し笑う。
係長はベンチから立って伸びをする。
駄目元ってさ、俺たちみたいなしがないサラリーマンのためにあるような言葉だよな。
あの、ちょっと心当たりあるんで聞いてもいいですか?
ソクラテスは赤い飲物を口に含む。
そして吐く。
何じゃこりゃぁ!
何で別れのシーンで血ぃ吐いてんだよ!
幹雄ぉ!
お前の連れてきたエキストラ。。。天才だな。
えっ?
ハリウッドも狙えるよ。
大スターも夢じゃねぇ。
何も言わずにこれ買って。
健は幹雄にホワイトボードの資料を見せる。
係長はスタジオの中へ。
うちの会社には必要ねぇし。
じゃ、お前個人で買えよ!
バーカ。そんな余裕あるわけねぇだろ。
買ってやれよ。社会人。
これがこれでさ。
えっ!
幹雄は優子が妊娠したということを教えた。
今日の朝いきなり言われてまいったよ。
あんまり遠くに行かないでくださいよ。師匠。
やっべぇな。
鶴が監督に呼ばれる。
幹雄。タイムスリップしてきてる。
ほぉ~。
前にも未来から戻ってきただろ。
また来たんだ。
もっとテンションあげろよぉ~!
何か久々だな。いつ以来?
去年の初日の出以来。
あぁ、あのドント・ノック・ニューヨークのときだ。
ていうかさ、お前のせいで過去に戻ってくんのこれで最後なんだから。
せめて、ホワイトボードくらい買えよ。
全然意味わかんないんだけど。
だから、お前が披露宴で用意したスライドショーの写真に戻ってきてんの。
え?タイムスリップって俺も関係あんの?
お前が鍵握ってんの。
へぇ~。そうなんだ。
最後がプロポーズの時の写真てセンスねぇから。マジで。
幹雄は落ち込む。
おぉ~、ホワイトボードよ。
健と幹雄はスタジオの方を見る。
何故お前は人前にさらされながらもそれほどまでに…
幹雄ぉ~!
はい。
何でうちの現場にホワイトボードがねぇんだよぉ。
係長が健に合図を送る。
駄目元で来てみるもんだなぁ。
どうもありがとうございました。
いえ、どうもこちらこそ。
ありがとうございました。
幹雄、買ってもらったお礼に1ついいこと教えてやるよ。
何?
お前のこれ、これしてねぇよ。
健は優子が妊娠してないということを教えた。
はっ?何で健がわかんだよ。
どっから来てっと思ってんだよ。
じゃあな。
別の営業先へ。
こちらは最新の機能が満載でして。
いやいや、そういう機能は求めてないんだよね。
昔ながらの黒板の方が全然いいよねぇ。
あはははは。
それでしたら、こちらに黒板がついてるものもあるんですが、いかがでしょうか?
いかがでしょうか!
契約成立。
しゃ~!
ゲームセットォ!
係長とハイタッチする健。
いや、ありがとう。
君のおかげでノルマ達成できたよ。
何いってんすか、係長のおかげですよ。
きっと大丈夫だよ。彼女を奪い取る大作戦。
駄目元でいってきます。
失敗しても当たり前。成功したら男前。
行ってきます!
笑顔で走り出す健。
多田さんと礼は多田さん設計の建物の前にいた。
自分の設計図が、初めて形になったのがこの建物なんだ。
ふ~ん。そうなんだ。
出来上がっていく建物を見ながら、反省したり納得したり奮い立ったり、
色んなことを気付かせてくれた建物なんだよね。
じゃあ、ここが多田先生の原点なんだ。
うん。そう。
人生の節目を迎えた時、必ず来るようにしてる大切な場所なんだ。
健は走りながら礼に電話する。
しかし、通じない。
何で通じねぇんだよ!
ホールに入った2人。
あの教育実習の後もここに来たんだよ。
ふ~ん。そっかぁ。
ここで色々反省したんだ。
そだね。礼に言われたこと何度も反省した。
ず~っと平行線のままだったよ。って。
私、そんなこと言った?
うん。でも、あの一言がなかったら大学残って講師やろうって思わなかったし。
こうして礼と一緒にいることもなかった気がする。
僕と結婚してください。
驚く礼。
多田さんは舞台に立つ。
僕と結婚してください!
礼と結婚したいという思いは、この先何年経っても変わらることのない答えなんだ。
もう自分の中では答えは出てるのに、礼に伝えるの先延ばしにしたくなかった。
大学を卒業したばっかりで、そんなことすぐ考えられないかもしれないけど、
もし、礼の中でも答えが出せるのであれば、この先の人生ずっと共有していきたい。
すぐ返事をしなかった礼。
よーし、そろそろ準備いくかぁ。
ちょっとぉ、傘がないわよ。
傘!
鶴!お前何やってんだよ。傘だよ。傘。
鶴ぅ。コーヒー。
はい。すんません。
あっち!
熱いじゃねぇか!
監督のハンカチで零れたコーヒーを拭く鶴。
それ、おれんだろ!
はい。タオルタオルぅ。
幹雄は何やってんだよ。
鶴は撮影現場でこき使われていた。
撮影現場の外。
ごめん。嘘ついてた。
幹雄があたしのことどう思ってるのかわかんなくなって。
結婚とか考えてるのかなぁ。って。
試してたってこと?
ごめん。ほんとごめん。
幹雄に近付く優子。
仕事あるから戻るわ。
結婚するにしても金かかるだろ。
えっ?
子供いなくても、わがままで贅沢な女1人養うだけでも大変なんだよ。
幹雄ぉ!
あははははは。
笑いあう2人。
2人は抱き合いメリーゴーランド。
その光景を見た鶴は固まる。
礼!
研究室に駆け込む健。
それに驚いて資料をばら撒いてしまう多田さん。
礼は?
あぁ、岩瀬君。実はさっき礼にプロポーズしちゃいました。
えっ?
冷静になってみると、思い切ったことしてしまったかなって。
で、礼はなんて。
いや、まだ返事は聞いていません。
岩瀬君が礼と過ごしてきた時間に比べたら、僕らが過ごしてきた時間なんて本当に短いものなのかもしれません。
でも、これから時間を積み重ねて…
じゃあ、何で結婚なんですか!
はい?
そんな焦って結婚決める必要あったんですか?
焦ってるつもりは全然ないんです。
自分としては何度も何度も考えて時間をかけて答えをだしたつもりなんです。
あぁ。学生のことテストが早く終わってしまった後に時間があまるってことがありませんでした?
あの時間が苦手だったんですよね。
自分の答えはこれ以上考えても変わらない。
そう思えたんで、もうプロポーズしていいかなぁ。って思ったんです。
もし、礼の答えも一緒なら早く2人の時間を始めたいなぁ。って。
失礼します。
岩瀬君。
健は研究室を飛び出した。
やっぱりもう無理だ。
弱気になりそうになる自分を振り切りたくて、
気が付いたら走り出していた。
俺は、駄目元をやりに来たんだ。
礼と多田さんの答えを知るために来たわけじゃない。
自分なりの答えを出しに来たんだ。
礼とエリは2人で歩く。
礼は、どうすんの?
こういう人と結婚できたら幸せなんだろうなぁ。って思った。
この先、そう思える人とまた出会えるかもしれないし、もしかしたらもう二度と出会えないかもしれないし。
礼は立ち止まる。
ほんと難しいよね。
ただ、自分が幸せになるってだけなのにさ。
もしもし。
健!逃げんなよ。
何が?
初任給でみんなに焼肉おごるって約束しただろうが。
もう、礼とエリ向かってるってよ。
礼とエリは焼肉屋の前に着く。
しかし、礼は入ろうとしない。
看板にぶつかる健。
またお前かよ。
ドント・ノック・ニューヨークの看板だった。
再び走り出す健。
ATMの前。
残高23円。
鶴が焼肉屋に着く。
鶴1人?
幹雄がこれさ。
でも、今日はもうすぐ来ると思うよ。
あれ?礼は?
実は。。。
エリは鶴に耳打ちする。
礼は歩き、健は走る。
お肉が到着。
なぁ~。おいしそう。
プロポーズかぁ。
お腹すいたよぉ。
プロポーズなぁ。
先食べちゃおうか。
プロポーズねぇ。
ねぇ、聞いてんの?
エリを見つめる鶴。
俺と結婚してください。
店内の音楽が止まってしまう。
やだ。
音楽がなりだす。
じゃあ、俺のお嫁さんになってください。
やだっていってんじゃん。
嫁にこないか?
行・か・な・い。
エリの隣に移動するエリ。
毎日、俺のために味噌汁を作ってください。
やだって。
生まれ変わってもあなたと結婚したいです。
やだ。
じゃあ、俺と付き合ってください。
いいよ。
お肉を焼き始めるエリ。
笑顔のエリ。
えっ?
わけのわからない鶴。
俺と付き合ってください。
いいよ。
えぇ~?本当に?本当に?
嫌なの?
全然。
はい。あ~ん。
鶴は口をあけて待つ。
あっ。そういえばさ、健どうしたの?
鶴は口をあけたまま待つ。
健は走っていた。
本当に無駄だったと思ってるのか?
お前は何のために過去に戻ってる。
これが最後の写真だぞ!
俺にチャンスを与えたこと、俺に後悔させないでくれ。
過去に戻ってくるたびに、俺はひたすら走り続けた。
何が正しい道かはわからないけど、
ただただ走り続けることしか出来なかった。
礼。
君の心に何か届いているんだろうか。
離れていこうとしている君との距離を、少しでも変えることが出来たんだろうか。
でも、1つだけ確かなことがある。
今でも礼のことが好きだ。
どんなに離れてしまったとしても、この気持ちだけは変わらない。
礼。
お前のことが、、、世界で一番好きだ。
礼は公園を歩く。
驚いて立ち止まる礼。
そこには健が立っていた。
どうして?
一番辛い記憶をやり直すために、俺はここに立った。
ここが最後の決戦の場所だ。
多田さんに聞いた。
そうなんだ。
驚いたままの礼。
ビックリしたでしょ。
あたしなんかがプロポーズされるなんて夢にも思わなかった?
そうだな。
結婚とかプロポーズとか家庭とか、もっとずっと遠くにあるものだと思ってた。
ついこの前、高校卒業して、大学入ったと思ったら、あっという間に卒業でさ。
ケンゾーなんて、もうスーツ着てんだもんね。
一昨日までユニフォーム着てた気がするのに。
言い過ぎだろ。
少しの沈黙。
礼は話しだす。
あたし、、、多田先生のプロポーズ受けようと思うの。
いきなりで驚いたけど、うれしかったの。
多田先生と向き合いたいな。って思った。
だから、、、
やめろよ!
えっ?
そんな簡単にプロポーズ、、、受けんなよ。
ケンゾーの言いたいことすごくよくわかるよ。
まだ22だし、建築のこともっと勉強したいからって大学院いったんだし。
今すぐ焦ってすることないって。
だったら、もっとちゃんと考えてからでもいいだろ。
たった1年ちょっとだろ。
1年で、、、多田さんの何がわかんだよ。
そんなのわかんないよ。
わかんないことたくさんあるよ。
多田先生だって、私の知らないことたくさんあると思う。
でも、大切なのって、、、これから、その人と向き合っていきたいかってことだと思うの。
もっともっと多田先生のこと知りたいと思うし、私のことも知ってほしいと思う。
そう思えた人なの。
健は何も言えない。
じゃあ、行くね。
歩き出した礼に健は言う。
相手のことよくわかんねぇのに、結婚てなんだよ!
たいして知りもしない人間と、結婚してどうすんの。
ていうか、そんなんで結婚決めんのバカだろ。
返ってくる答えはわかっていたはずなのに、
過去と同じ言葉が思わず口をついて出た。
礼は振り向く。
こんなにずっと一緒にいるのに、ケンゾーは何もわかってないよ。
何にもわかってない。
礼は歩き出す。
健は追いかけた。
そして、後ろから抱きしめた。
頼む。
行かないでほしい。
俺と結婚しろよ。
どうして?
どうして今そんなこと言うの?
礼は健の腕をほどいた。
本当に何もわかってないよ。
何にもわかってない。
礼は涙をこらえるようにして再び歩き出した。
噴水の前で健は座る。
ポケットから何かを取り出す。
人生で初めて買った指輪。
給料3ヶ月分とはいかなかったけど、
どうしても買いたくなって、初任給全額で勝負をかけた婚約指輪。
健は指輪を左手の薬指にはめた。
サイズを聞かれて、礼の指にはまらないと嫌だったから、
一番大きいサイズで。と頼んだ。
俺の指でもブカブカだ。
指にはめた指輪を見つめ健は涙を流す。
礼は多田さんの待つお店に着く。
ごめんね。待たせちゃって。
それはいいんだけど、、、どうかした?
礼の表情を見て多田さんが聞く。
大丈夫。
料理に悪戦苦闘の多田さんを見て礼は微笑む。
多田先生。
へ?
私、、、多田先生のプロポーズ受けることに決めました。
えっ?
多田先生と結婚します。
本当に、僕でいいんですか?
笑う礼。
はい。
答えを聞いて安心した多田さん。
また、お前かよ。
健はドント・ノック・ニューヨークの看板の前に来た。
ポケットから指輪を出し看板に。
その時、礼は多田さんから婚約指輪をもらった。
ありがとう。
笑顔の礼。
看板にはめられた健の婚約指輪。
健は歩き出した。
綺麗に光っていた。
健は礼と多田さんのいる店の前で立ち止まる。
店の中では2人が楽しそうにしている。
駄目元は、、、やっぱり駄目なまんまで終わってしまった。
これで最後だ。
本当のゲームセットだ。
シャンパンを持つ2人を見つめる健。
シャッターが切られた。
未来に戻った。
健は写真に目をやる。
あれ?
あれ、後ろになんか写ってるよ。
ねぇ、もしかして健なんじゃないの?
健なの?これ?
背後霊だ。背後霊。うわっ。こわぁ。
幹雄が鶴の口を抑える。
結局、どうあがいたところで、俺と礼は結ばれる運命じゃなかったんだ。
これで終わりだ。
笑う礼を見つめる健。
そして、下を見る。
いよいよ次のお写真が最後の1枚となります。
えぇぇ!
えっ?
健は思わず声を出し会場の注目を集めてしまう。
これで満足?
えっ?
幹雄が健に話しかける。
プロポーズの日の写真が最後だったのが、気に食わなかったんだろ。
幹雄、お前。
これで貸し2だからな。
健は幹雄のおかげで増えた写真を見つめた。
建築学会新人賞受賞記念パーティーで撮られた写真。
そして、時が止まった。
まさか、また会うとはな。
健は幹雄の隣から出てきた妖精を見る。
このお友達に感謝しろ。
これが正真正銘、これが本当のラストハレルヤチャンス。
健は心を決めた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
キャスト
☆岩瀬健…山下智久 ☆吉田礼…長澤まさみ
☆奥エリ…榮倉奈々 ☆榎戸幹雄…平岡祐太
☆鶴見尚…濱田岳
☆妖精…三上博史(特別出演)
☆多田哲也…藤木直人
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